つめたいみず

朝に

顔をあらうとき

たまに

ずっと遠くにいるひとを

さがしたいような心地がする

それがまた

運命の呼び声

と、かたづけるには厄介な代物で

だれかをまた愛したい

と、まぁそのていどの

ちょっとした嘆きにも思えて

蛇口からあふれるつめたいみず


いたい

うんといたい


ある過去の風景には

郵便局のまよこ

みずよりも透きとおったかおの

あなたが

手を振って

信号機のさき

わたしがくるのを待っている

ただその風景がある

手垢がついて、あまりきれいでないけど


まどろみという魔法がとけて

だれかに知られたわたしになって

あぁ、もうここにわたしはいないの

と、わかったふうな気で

蛇口をしめれば

まだ手の甲に残ったみずが

いたい

うんとつめたくて、いたい

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