第2話
それから僕は誰とも喋る事なくあっという間に放課後になってしまった。
「鈴〜!英語のノート貸してぇー!途中で寝ちゃって全然写してなかったの!」
「いいわよ、でも葵ちゃんせっかく成績もいいんだしちゃんと授業中起きれるようにした方がもっと身になるんじゃない?」
「うわっ、先生みたいな事言いだした!」
「あなたの為を思って言ってるの」
なにぶんコミュ障の為なんて声をかけようか考えているとそんな会話が聞こえてきた。
鈴宮さんと話してる彼女は、
「ねぇ鈴この辺で新しくクレープ屋さんに智花達といくんだけど鈴も一緒にいかない?」
「ごめん、私はパスで」
「もー!いっつもじゃん!まぁ、忙しいの分かるから遊べる時はちゃんと鈴からも声かけてね、必ず行くから!」
「うん、ありがとう」
ますます声を掛け辛いなぁ…どうも鈴宮さんは放課後忙しい見たいだしノートもそれなりの量ではあるが1人で持てない訳でもないし全部持っていってしまおう。
そのままノートを抱えて教室から出たところで背後から声を掛けられてしまった。
「ねぇ鷹宮」
「鈴宮さん?」
「なんで先にいっちゃうの?声かけてくれればよかったのに」
「あ、あぁごめん。早く済ませて帰りたかったから」
「そっじゃあはい、半分ちょうだい。もともとは私の仕事なんだし」
「いや別に僕1人でも行けるし気にしなくても大丈夫だよ」
「話し聞いてた?日直はもともと私だし、それに早く終わらせたいなら2人で運んだ方が効率いいでしょ」
…正直忙しいとも言ってたし大体の人ってこういったら『そう?じゃあよろしくね〜』といった感じで引き下がると思っていたんだけどなぁ
しかし鈴宮さんは何故か引き下がらない。見た目の割に律義な人だ。
仕方ないから半分より少ないくらいのノート束を差し出す。
「じゃあ悪いけどよろしく頼む」
「それ、本来私のセリフなんだけどね」
「ねぇ?鷹宮ってさ、意外と優しいよね」
ノートを物理室に置いて教室に戻る途中、後ろを歩いていた鈴宮さんがいきなりそう言ってきた。
危なかった、急だったから思わず変な声をあげそうになった。
一旦落ち着いてクールに行こう。
「そんな事ないだろ。そもそも優しさを向ける相手がいないし」
「そう?じゃあなんでさっき1人で行こうとしたの?」
「それはさっきも言った様に早く帰りたかったからだよ。別に優しいとかじゃない。それをいうなら鈴宮さんこそ忙しいって耳にしたけど手伝ってくれるあたり優しいんじゃない?」
「…ふ〜ん」
僕の返答に余り納得した感じは無かったけどそれ以降、鈴宮さんは話かけてこなかった。
程なくして教室につき帰り支度をしていると鈴宮さんが話かけてきた。
「じゃあ私は先に帰るね!…それと」
彼女はそのまま教室の出口で振り返り、はにかんだ様な笑顔で言った。
「鷹宮はやっぱり優しいよ!」
鈴宮さんはそのまま帰っていったが僕は彼女の笑顔になんとも言えない様な感覚をうけ暫く動けなかった。
ちなみにそれから15分後に帰宅した。
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