無能の烙印を押されましたが実は最強チートでした、な奴だらけの街 ~転生賢者・最強村人・外れスキル・常識知らず・パーティー追放・異世界召喚・中年おっさんたちが大暴れ~
第13話 無能のクズと馬鹿にされ虐げられていましたが、俺だけ使える特殊加護が覚醒した結果、最強の加護に変貌しました。勇者パーティーは壊滅的らしいですが知りません。 ~俺から始まる絶対ルール~ 5
第13話 無能のクズと馬鹿にされ虐げられていましたが、俺だけ使える特殊加護が覚醒した結果、最強の加護に変貌しました。勇者パーティーは壊滅的らしいですが知りません。 ~俺から始まる絶対ルール~ 5
「ふっざけんなぁ!」
サニスの腹目掛けて突き出された牙に、俺は横から体ごと突っ込んだ。間一髪、俺の突貫でほんの少し向きが変わり、サニスの腹を掠めるに終わった。
「あ……あぁ……」
サニスはその場にくずおれる。
「早くしろ! 武器を持て! 戦え!」
「け、剣が、俺の剣が、折られた」
「落ちてる武器を使え! お前しか攻撃が通じる奴がいないんだよ!」
「あ、うわあああぁぁぁぁ!」
サニスは武器の落ちているほうへ駆けて行った。ここで亡くなった冒険者さん、勝手にあなたたちの装備品を使う無礼を許してください。
「
後方からセレスの声が聞こえてくる。
『ブオオオオオオォォォッッッッ!』
俺の足元から土の槍が飛び出し、
「クレイ、邪魔!」
俺は即座にその場から離れる。
『ブルオオォォッ!』
後方から飛んできた炎の矢が
「
再び
「こっの!」
俺は持っていた短剣で、
これで片方の視界を奪った。
『ギュモオオオオオオオオオォォォォォォッ!』
「やった……」
喜びもつかの間、暴れた
「ぐ…………」
咄嗟に持っていた盾で守るが、はるか上部に吹き飛ばされる。
「あ…………」
死んだ。
空に吹き飛ばされた俺は、瞬時にそう悟った。
暴れる巨大な
「こんな時に戦況が分かったってよ……」
俺は皮肉に嗤った。この距離から落ちれば即死は間違いない。もう俺は助からない。思えば、まともな加護ももらえずによく頑張ったものだと思う。
自分の能力を下げるような加護を持っていながら、どうして冒険者になんてなってしまったんだろうか。どうして冒険者なんて志してしまったんだろうか。俺は誰か一人でも、守ることが出来たんだろうか。
俺は段々と迫る地面を見ながら、最後の時を待った。
「諦めないでクレイ!」
セレスティアの声が聞こえる。
「……っ!」
俺は反射的に、体勢を直していた。
「
セレスティアの魔法が俺の足元にめがけて使用される。
激しい衝撃音とともに俺は地面に落ちた。
「ぐああああああぁぁぁぁっ!」
バキボキと骨が折れる音がした。何本の骨が折れたか分からない。
「……生き……てる」
だが、俺は生きていた。咄嗟にセレスティアが泥の地面に変えたため、衝撃が和らいだ。
「クレ……イ…………」
はぁはぁと肩で息をしながら、セレスティアは俺に親指を立てた。
「ありがとう……」
俺は痛む体をよそに、再び
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
「死ねえええええぇぇぇぇ!」
いくら堅い皮膚といえども、体内は堅くないはずだ。
「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そのまま手元に向かって、全力を投じ、切り裂く。
「セレスティアァッ!」
「
数多の攻撃で剛健さを失った顎と口蓋を、五体の土人形が無理矢理開かせる。
「
セレスティアの魔法により、土人形が土の槍に変化し、そのまま
『グ……ルァッ……』
顎から脳天にかけて五本の土の槍が刺さった
『グ……』
その場でゆっくりと霧散した。
「……っ」
「…………」
「よ――」
「よっしゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は地に伏したその場で、右手を高く上げた。
「い、痛ぇ……!」
「クレイ!」
セレスティアが俺に向かってかけてくる。
右手は完全に骨折しているみたいだ。血だらけになった右腕に、セレスティアが治癒の魔法をかけてくれる。
「セレスティア、汗が」
「こんなの大したことないよ!」
セレスティアも疲弊しているはずだ。何度も何度も魔法を行使した。とっくに精神の限界は過ぎているはずだ。
「ありがとう、ありがとうクレイ」
「良かった。皆無事で……」
俺はやった。俺はやったんだ。地面に倒れこむ。
泥の地面が、妙に心地良い。冷たい土が、ほてった俺の体を冷やしてくれる。
「やるじゃん、あんた」
「ほとんどセレスティアのおかげだよ」
メリアが俺の頭を軽く小突く。
「よくやったよ」
「お前もあいつの視界を奪ってくれてありがとう」
俺はメリアと拳を軽く合わせた。
「は、ははっ……全部俺のおかげだよな」
サニスがようやく、俺たちの下へとやって来た。
「なんでもっと早く来てくれなかったんだよ」
「お前は囮だろ? お前が囮をちゃんと果たさなかったから俺があいつに攻撃できなかったんだろうが」
「そんな――」
そんなわけないだろうが。そう言おうとした。
言おうとした直前に、また新たな違和感に気付く。
どうして冒険者の遺品が、花園の外側に密集していたのか。
誰かがそこに集めた? いや、冒険者にそれだけ敬意のある者が、
俺は毎日
なら何故だ。
あの
あの
何か。何か、花園の外側で密集しなければいけない何らかの理由があったはずだ。何か、花園から追いやられて……。
「早く逃――」
遅かった。
後方からズブズブという、音がした。俺はゆっくりと首をめぐらせる。
「おい……」
ボキボキに折れた体を無理に動かしながら、その何かに視線を合わせる。
『キシシシシシシシ』
『キシシシシシシシ』
『キシシシシシ』
『キシシシシシシシシ』
『キシシシシシ』
『キシシシシシシシ』
『キシシシシシシシシシシシシシシ』
『キシシシシシシ』
『キシシシシシシシシシ』
『キシシシシシシシシ』
『キシシシシシシシシシシシシ』
人型の体を持ち、大輪の花を頭部につけた、見たこともない魔物が土から何十、何百匹と出てきていた。
「ふざけんなよ……」
「嘘……」
この花園は楽園でもなんでもなかった。要は、冒険者を食い殺すためのただの罠だった。
「何匹いるんだよ」
大輪の花を頭に持ち、人型の体を持つ魔物が、どんどんと土から這い出てくる。大輪の花に唯一存在する、大きく裂かれた口元が、花のイメージを損なわせる。
「嘘……だろ」
俺は眼前の絶望に、言葉を失った。
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