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詳しくてわかりやすい説明に美香は感嘆するしかなかった。

実を言うと喫茶店というものにあまり行ったことがなかったのだ。

あまり行く機会もなければ、近くにこういう古風な感じなお店もあるわけがない。

「じゃあ、これの他にもいろんなデザインとかあるんですか?やっぱり難しいんですか?」

ラテ・アートに少し興味を持ったのか、美香は闇野に聞いた。

「今私がしたのはエッチングというとても手軽なアートです。そんなに難しくはありません。普通に泡立てたミルクの上に型板の上からココアを掛けたものですから。しかし、上級になるとミルクの注ぎ方やスプーンの回し方などによって様々なデザインが作れます。主に葉っぱとかハートとかが簡単で主流になっていますね」

「へぇー」

美香は綺麗に月と星が浮かぶコーヒーを見つめながら口を歪ました。

香ばしい香りが気分を和ませてくれるようだった。

「なんか見てて飲むのが勿体ないです」

「でも、冷めない内に飲むとまた味が格別ですよ?」

「うーん、なんかそう言われると」

「コーヒーには眠気覚ましだけではなく種類によっては今の美香さんのように目で見て、その味を楽しませてくれる他、心を落ち着かせる働きだってあります。一口だけでもどうですか?」

心を落ち着かせる――。

その言葉に美香は少し反応した。

もやもやとしたこの何とも言えないやるせないこの気持ち。

飲んだらスッキリするだろうか。

そう思いを胸に抱きつつ美香はカップを口に付けたのだった。

苦い、だけど少し甘い。

それは紛れもなく大人の味だった。

しばらくしてコーヒーを飲み、ゆっくりとしていると気がつけばあっという間に時間が過ぎていた。

美香にしてみれば、ほんの少しだけの時間のはずだったのだが、どうやらそれ程までにゆったりと和んでいたのかもしれないと思った。

カランカラン、とベルが鳴り、木の扉が開かれる。

開けたのは美香。

「ありがとうございました」

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