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「お待たせしました」
受け皿に乗ったコーヒーの入ったカップと細長いスプーン、白い瓶二つを置いていく。
「ありがと、ところでそこで寝ているバカはまだ起きる気配はないかい?」
「え?あぁ、彼はまだあのままですよ」
「全く情けない奴だ」
「少し私から意見ですが、影山さんの言い方がきつ過ぎだったのではないかと」
マスターがそう言うとまたギロリと影山はマスターを睨んだ。
「影山さん、眉間に皴が寄ってますよ?」
ニッコリとマスターは自分の額を指差して笑った。
また一段と影山の顔が怖くなっていくが、マスターは怖がることなく平然としている。
この光景を見るとけっこう関係が長いのだと思われた。
「では、ごゆっくり」
そう言い残すとすたすたとマスターはカウンターに戻っていった。
「では、美香さん。今から僕のオススメを淹れるので待っていて下さいね」
「はい、お願いします」
マスターはコーヒーをカップに注ぐと、微量の砂糖を加え、カウンターの下にある小さい冷蔵庫から牛乳を取り出した。
それをボールに入れて次に電動ミキサーであっという間にふわふわとした生クリーム状になるまで泡立てた。
それを水差しに入れるとコーヒーを注いだカップに円を描くように泡を満遍なく注いだ。
仕上げには月と星の形に開いている型板を取り出し、その上からココアパウダーをさらさらと塗す。
出来上がったのはコーヒー・アートされたカプチーノだった。
今度は花柄のピンクの受け皿にカップを乗せて
「カプチーノです」
と、言って闇野は美香に渡したのだった。
「わぁ」
美香は可愛らしくコーヒーに描かれた絵に声を上げた。
「喜んで頂いて嬉しいです。女性の方でラテ・アートを喜ばれる方が結構いらっしゃるので、やった甲斐があります」
闇野はそう言いながらボールや電動ミキサーを片付けていった。
「ラテ・アート?」
「カプチーノの親戚でカフェ・ラッテというのがあるのですが、主にラテ・アートはそのカフェ・ラッテでやられることが多いんです。ラテ・アートの名前はそこから来ています」
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