いつもの学園生活?
「よぉ大聖。昨日は何で学校に来なかったんだ? 寂しかったじゃねぇか」
「ん? あぁ。ちょっとな」
俺が教室に入った瞬間に翔也が話しかけてきた。昨日のことと、これからどうするかを考えていたので返事が雑になってしまった。あの言い方だと、恐らくまだ何かありそうだったし。
「そっか」
「……詳しく聞かないのか?」
いつもならニヤニヤしながら、いろいろ聞いてくるのに今日はあまりグイグイ来ないんだな。
「だってお前が凄く真面目な顔で考えてたからな。それを邪魔しちゃ悪いだろ。それにあんまり聞かれたくなさそうなことな気がする」
翔也は本当にこういうことに敏感だよな。実際この対応をしてくれてありがたい。流石にあのことを言いふらすわけにはいかないからな。
まぁでも、吉田さんが良ければだが、翔也にもいずれはこのことを話したいとは思っている。俺よりも戦力になってくれそうだし、こいつは信頼できる人間だからな。
「大丈夫か翔也? 体調悪いのか? それとも昨日何か変なもの食べたのか?」
「おい。お前は素直に礼も言えないのかよ」
「冗談だよ。ありがとな翔也」
冗談を言って笑ったかと思ったら、すぐに翔也が真面目な顔になる。
「でも困ったら俺に相談しろよ」
「あぁ。そのつもりだよ」
「お? そんなに俺のことを頼りにしてるのか」
結局こうなる。真面目な雰囲気が台無しだ。まぁでも俺たちらしいからいいか。
「ところで、何で大聖の横に吉田さんが居るんだ?」
「あはは……」
やっぱり気になるよね……。周りからの視線も凄い。いつも翔也とか吉田さんってこんなに見られてるんだ。大変だな……。凄く疲れる。
「まさか昨日休んで、二人で会ってたのか?」
おい。ニヤニヤを抑えろ。否定できないけど、認めちゃったら良からぬ噂になるだろうからどう逃げるか考えていたら……。
「うん。そうだよ」
「「……え?」」
言っちゃったよ。それ後で吉田さんが面倒なことになるけどいいの?クラスの奴らがちょっとざわつき始めてるんですけど。しかも翔也なんて、おもちゃで遊ぶ子どもみたいな表情になりつつある。これ以上余計なことは言わせないようにしなきゃ。
「何してたの?」
「相談にのっt」
「大聖君に騙されて酷いことされたし、恥ずかしいとこ見られた」
おい。わざとだろ。しかも嘘は言っていないので、否定しづらい。恐らく、酷いことは自販機の件で、恥ずかしいところを見られたというのは、泣いていたところを見られたということだろう。幸い俺たち以外には聞こえなかったらしい。
とりあえず俺が必死に弁解をして、誤解を解いた。吉田さんはその間ニコニコしながら、俺の姿を見ていた。やっぱわざとだな。もしかして翔也と吉田さんってくっつけてはいけないコンビなのでは?
「えっと、翔也に話す?」
遅かれ早かれいずれ翔也には話すつもりだったんだから、どうせなら今言った方がいいだろうと思ったのだ。
「大聖君が信頼してる人ならいいよ。信頼できる」
うわぁ……。凄く信頼されてる。俺って昨日初めて会ったような人だけど、いいの? まぁ翔也は周りに言いふらすようなことは絶対しないけど。
「じゃあ話すよ?」
「うん」
彼女の表情が少し不安げになる。まぁそりゃこのことをあまり多くの人に知られたくないだろうし、今まで信頼できる人が居なかったから怖いのだろう。
「大丈夫。翔也は信頼できるよ。俺が保証する。……って言っても、俺が保証したところで不安が消えるわけじゃないだろうけど」
「ううん。ありがと」
そう言って彼女は笑った。しかしまだ、彼女の顔には不安の色が見える。
「結構仲いいんだな」
「うるせぇ」
翔也がニヤニヤしながら、茶化してくる。これのおかげで空気が明るくなり、話しやすくなった。ほんとに助かる。
この空気が壊れないうちに話した方がいいだろうと思い俺は翔也に昨日のことを話した。もちろん周りに聞かれないように小声で。
「そっか……。それは辛いよな。……俺にできることなら何でもするから、何かあったら俺に言ってくれ」
俺は中学の時に翔也に助けられたから、今回もきっと彼女の力になってくれるはずだ。
「ありがとう三島君」
「わかってると思うが、このことは」
「誰にも言うな。だろ?」
俺が最後まで言い終わる前に、俺のセリフを盗られてしまった。
「あぁ。頼む」
翔也の方が頼りになるから、暫くしたら俺の役目は
「そんなことないと思うぞ」
「え? 顔に出てた?」
「おもいっきり出てた」
ヤバい恥ずかしい。自分でも顔がトマトみたいに赤くなっていくのがわかる。……もうヤダ。
「……お前覚えとけよ」
いつか絶対同じような目にあわせてやる。
「吉田さんも安心して。盗らないから」
「っ……。こっち見ないで」
「ちょ……イタイイタイ」
何のことか吉田さんに聞こうと思い、吉田さんの方を向こうとしたら顔を吉田さんと反対方向に押し戻された。一瞬しか見えなかったが、何故か吉田さんの耳が朱に染まっていた。
「そういえば吉田さんは大聖のことを下の名前で呼んでるのに、大聖は吉田さんのことを名字で呼ぶんだな」
余計なことに気づきやがって。
何故か昨日ファミレスに行ったときに、吉田さんが急に下の名前で呼び始めたのだ。やめてとお願いしたら、「恥ずかしいの?」と言われ、挑発に乗ってしまった結果がこれである。
「そうなの。下の名前で呼んでって言ったのに、呼んでくれないの」
「恥ずかしいのか?」
「あぁ。そうだよ悪いかよ。明里さんだって嫌だよね?」
……やっぱ恥ずかしいな。
吉田さんの耳が朱に染まっている。冗談だったのに、俺が下の名前で呼んだから怒ったのか? やっぱりやめよ。
「ほら吉田さん怒ってるじゃん」
「え?」
「いやだって、耳朱いじゃん」
何か吉田さんに睨まれたけど、ちょっと涙目だから、怖くない。むしろ可愛い。
「え? 何この空気? そんなに嫌だった?」
「お前それ本気で言ってる?」
「え? 謝った方が良い?」
「はぁ……。いやいい。……吉田さん大変だけど頑張って」
「うん」
えぇ……。よくわかんねぇ。やっぱ俺が悪いのか?
「こっちの相談も乗ろうか?」
「うん。お願いするかも」
なんかよくわからないけど、二人が仲良くなったみたいでよかった。でもこれから毎日この調子だと、疲れそうだな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます