第4話

〈部屋〉

「精神だぁこれぇ」

 家では隠す必要がない衝動が表現出来脳内の果汁が床の下の空気に垂れ出して私は今ここにいる顔見知りもそこにいる若干の時間的経過を以てここに至るこの身体を所有して体重が証明となってこの意識は誰のものなのかそれはどうでもいいとここで机の奥の黒ずみを半分見ている見れているのはこの体勢で斜めに傾いて足の小指がベッドに当たるので額を降下させて木材の角な救済を一つ貰ってもまだ残る残る残る疑問が可笑しいと思って今朝から電車から教室まで私が帰るまで出来なかったその勇気さえ無かった私と違い今では誰も見てない抽斗に収納した文房具に声を掛けて手に掛けた世界が赤い世界赤い世界強い世界で強くなってみるとはぁうぅぅぅ!気持気持ちが良良いからここにやってきたよって誰もいないんだけど安心だけどもっとしたくてはぁうぅぅぅぅぅぅぅ!!はぁはぁ良いなぁ良いなぁ滑り落ちる私の腕の結晶が夢見心地な温度でこのままお風呂に入りたいゆっくりケアしてる流れる私を見つめてこのまま暫く過ごしたら窓から上半身を折ってみる予定が生まれて片脚捻ると盛り返してきた世界に疑いを掛ける嘔吐感がこんな表面的なものよりちゃんと内面を抉ってきて精神を主張してくるそれは赤黒いと見えた気がすると私の比較吐き気学が示すとありのままの正直取り戻す劇的な生前を感じると一緒にまた戻ってきた自分ではない掠れる誰かのしなやかな腕力に圧倒されフローリングに貼り付けられ思い通りに出来ない血塗れの片腕を利用するという暴力から止めないと殴るという暴言まで揃えた攻撃の意思表示に負けず劣らず眼前の正体を暴こうと振り払おうとすると最高に気持ち悪い場面を現実化する分泌に襲われてぐぐぐぬぼううぅぇぇぇぇぇ吐きたいえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ吐いた。

 消化液主体の作品を世に出したら例の如く吐き気は何処かへ去っていった。座り込んだまま酩酊する部屋にいるのは私一人で、止まらない洪水から観察できた虚ろな景色は現実の一部だったらしい。記憶喪失の残り香に今生きているか確かめられず物足りなさを錯覚してしまいそう。はぁーはぁーと空気を貪れば自分と会話できる程度の正常性を取り戻す。この症状に完治は有り得ないので明日にでも再会するだろうけど。経験する度に耐性がつく訳でもなくただ死後の居場所を内見する感覚に疲れが生じて膝を曲げた。

 やっぱり死にたいな。死にたいと思うのは論理的だ。生に縋ることは間違いを誤魔化し続けることだ。何かと何かを化合して止揚するなんて一見高みに近付くようだけど、限界まで近付いたその瞬間時限爆弾が着火し積み上げたものは瓦解する。後になって漸く徒爾な努力だったと歴史を振り返るのだ。正しさとは時間であるはず。時間を掛けて最後に辿り着く先が真理だとすれば生きとし生けるもの全て消滅、死滅するのだから死ぬことが正しい。生まれなければいい。私は生まれて来なければよかった。

 嘔吐もしない人間はそれは上手く生きていけるだろ。ただの思想や精神だけで争う気になるのは余程花塗れな頭を作り上げてきたんだね。私だって四六時中悲しいし苛々もするが、それ以上にこの脳が潰されるような鬱陶しさ。統合失調症なのか何なのか診断書はないけど名称はどうでもいい。医者の眼に映らない限りどうせ想像に過ぎないのだから。私には視覚で捉えられない事象が多過ぎて他人には解ってもらえるはずないけれど仕方ない。眼に見えることなんて錆びた体液を流すことしかできない。だから自殺したい。可能な限りショッキングな方法を取れるから。

 吐き気ショウの登場人物と生の在り方に不満を覚えた私は夕飯の時間を今日も欠席することにした。元より食べるという気持ち悪い行為には気が進まない。他の命をぐぢゅと潰すことに恐怖を感じるのは理性の働きに相反しないと思うけど。兎に角何も要らない。制服だって要らない。私らしい可愛い桃色の服に着替えた。

 全く情緒不安定。全身の力が抜けた今は自殺の僥倖なのか。そう思ってベッドに横たわる。だらだらと悪化する人生を歩む私。自殺するその日まで続くなら付き合おう。私は吐いて耐える。感情などには屈しない、床に足ついた理性が誓う。

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