短い夜に…ごめん
門前払 勝無
第1話
短い夜に…ごめん
君なんて…嫌いだ。
もう話しかけないでくれないか…気持ち悪いから…。他の奴等と同じくせに自分は特別だなんて言わないでくれないか…。
線香花火が消えるまでの間だった。
雨上がりの空が綺麗だったから…君の僕以外の話がうざかったから、ハンドルを握る事が面倒だったから、君の瞳が見たかったから、僕は君を抱き締めたかったんだよ。
神秘的な二人だけの時間だったのに僕がバカだからぶち壊してしまった。三時間が三分に感じる素敵な時間を過ごしていたのに、ケーキを持った奴が君に近付いてきたから僕は焦ったんだよ。君はケーキが好きだから…何も持たない僕は戸惑ったんだ。
夜空が何かの光に照らされて、木のシルエットにハートが浮かんでいるよ。幻想の君を隣に想い僕はそれを見つめる。
微かに残る君の横顔を思い出しながら車を走らせる。君に聴かせたかった歌を流しながら遠くへ向かう。
強がって必死に壁を作っている。安物の煉瓦を積み上げて、モルタルを練って一心不乱に壁を高く高く積み上げていくんだ。
もう僕を見ていない君を、僕は忘れない…。
冷たくなってきた季節は僕に君以外のプレゼントを渡してくる。僕は無口にそれを開ける。欲しいのはそれじゃないけど僕は苦笑いする。
とても短い夜に僕は…。
伝えられなかった…。
強がって、カッコつけて、みっともないけど…。
「ごめんね」
それだけが言いたい。
ごめんね…言えなくて、僕は君の幻想を目の前の肉塊に重ねて言う。
おわり
短い夜に…ごめん 門前払 勝無 @kaburemono
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます