十二月二十五日 納め天神(年越しの大祓)

 学問の神様であり、日本を代表する三大怨霊の一角を締める菅公かんこうこと菅原道真すがわらのみちざね公を祀る天満宮系列の年内最後の縁日であり、神事納めの日。

 産土うぶすなさんが天満宮という筆者にとっては、年内最後の参拝納めをする節目にあたる。


 天神さんの縁日がなぜ二十五日なのかというと、菅公の誕生日=承和十二年(八四五年)六月二十五日も、命日=延喜三年(九〇三年)二月二十五日も、実はどちらも「二十五日」という縁が関係してくる。


 さすがにこのご時世、越境参拝するわけにもいかず、今住んでいる地域の天神さんにお参りするのだが、納め天神ということもあり同日「年越しの大祓おおはらい」が行われる。

 古くはイザナギノミコトの禊祓みそぎばらいを起源としている厄除け祈願である。

 本来「晦日みそか」に行われる神事なのだが、天満宮系列では納め天神の日に合わせて行っているというわけだ。


 事前準備として形代かたしろ(人型に切り抜いた白紙)に氏名、性別、年齢を書いて体を三度ぬぐい、三度息を吹きかけて半年分の厄を肩代わりしてもらい、お焚き上げしてもらう年末の風物詩である。


 半年分——というのは、六月三十日時点で一度「夏越なごしの大祓」をしてもらっているので、そこから改めてアカの如く溜まる厄をもう一度落としてもらうという作法だ。

 その昔は夏と冬の終わりに一年の節目があり、現在の暦換算だと一年で二回の年周り——二歳トシをとることになる。その節目で穢れを祓うという割と重要な行事である。


 当日、形代をお納めして受付を済ませると同時に、お祓い神事で使用する護摩木(護摩供ともいう)と麻緒あさのお、神事中に詠唱する大祓祝詞おおはらいのりとが記された用紙をいただくので、まずは護摩木に祈願成就したい事柄をあらかじめ記しておく(例えば、家内安全とか無病息災とかそんな感じ。ちなみに去年は「コロナ退散」が一番多かった)。


 大祓神事が始まるまでの間に昨年いただいた御幣ごへいをお返しして、社殿参拝を済ませておく。

 末社まで回るので、今まではこの時のためにわざわざ綺麗なじゃら銭を用意していたのだが、来年一月中旬以降に順次、一部の銀行手数料が値上げされる(小銭を口座に入れるだけでカネ取られるなんて馬&鹿じゃないの !? )ことを思うと、嫌がらせにならない程度にまとまった金銭にしておく必要があるという……(ちーん


 神事自体は日の沈む夕刻から始まるので、寒さ対策はマストになる。お腹にホカロンは鉄板だ。

 例年なら社殿に入りお焚き上げ前のお浄めをしてもらうのだが、このコロナで密を避けるために氏子代表以外は屋外待機に変更された(つまり、寒い)


 しかし、それでもクライマックスの大祓は屋外オープンエアーで行われる。

 北風に吹かれながら大祓祝詞を詠唱(ここ数年はマスク越しに小声でひそひそ)し、改めて麻緒で体を三度なぞり、ごうごう燃え盛るヒノカミファイアー(ちょっと違)に投げ入れるというのが一連の流れである。


 このファイアー、ピーク時には三、四メートルほどの高さに火が成長するので、寒いのだが熱い(笑)

 そして、火の勢いに負けて落としてもらう厄を擦り付けた麻緒や形代が、ひら〜り〜と宙を舞うこともしばしばある(笑)

 そんな時は、神職さんが冷静に(問答無用で)火にくべてくれる(その様がカッコいい)

 新しい御幣をいただいて、また一年心を新たに過ごすべく年越しの準備に戻るというのがこの時期のルーティーンである。


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追記:

今年のファイアーは北風に煽られてすこぶる調子良く「これも燃やしてええ?」みたいな感じで危うく神事用の祭壇まで手が届く大暴れだった。

(祭壇が素早く退避する光景は初めて見た。神職さんのファインプレー凄い)

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