十月十一日 新橋横浜間で脱線事故起こしました

 新橋横浜間——明治期、日本で初めて鉄道が敷かれた路線だ。

 貨物、旅客ともに重要な大量輸送手段として生活に欠かせないものとなっていったが、日本で初めて鉄道事故を起こしたのもまた新橋横浜間である。


 明治七年(一八七四年)十月十一日、午前八時十五分。

 横浜発新橋行きの機関車が新橋駅へと入る時のことだ。列車の進路をコントロールする分岐器ポイントの故障で、機関車両と貨物車両が脱線する事故が起こった。

 鉄道運行開始から二年後の出来事である。


 幸いにも死者負傷者ともにゼロだったが、交通の足には大きく影響した。

 午前中いっぱい運行中止となり、午後になっても一部区間は止まったままだった。

 これが、日本初の脱線事故の経緯である。


 やがて鉄道網が延長され、日本全国を徐々に網羅していくと比例するように鉄道事故も増えていく。

 明治から昭和前期(一八七〇年代から一九四〇年代ごろ)の七十年間だけを抜粋しても、八十九件の鉄道事故が報告されている。

(もっとも、この期間で一番事故を起こしまくっているのは第二次世界大戦から太平洋戦争真っ只中の一九四〇年代で、三十九件と突出している)


 戦後一九五〇年代から一九九九年までの四十九年間では、のべ百八十件。

 二〇〇〇年から現在まで、およそ百六十四件(最新事案の舎人ライナー脱線を含む)が報告されている。

 最も、これには自然災害で発生した被害も含むため、必ずしも人災とは言い難い部分もあるのだが、何にせよ絶対数が増えれば増えるだけ相対的に事故発生率も高くなるのはセオリーだ。


 日本に初めて鉄道が出来てからおよそ一世紀半、目を見張る発展を遂げてきた大事な生活の足だ。今後とも安心安全な乗り物であるためにも、事業者、利用者ともに鉄道ルールをちゃんと守っていきたいと改めて思う。

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