八月六日 仙台七夕まつり

 本来なら、原爆の日であることに言及するべきなのだろうけれど、せっかく祭りシリーズを取り上げているので、東北四大祭り最後の一つである「仙台七夕まつり」をテーマにしたいと思う。


 例年八月六日、七日の二日間で行われる日本最大級規模の七夕まつりである。

 しかしながら、「ねぶた」や「竿燈かんとう」のような伝統芸能(お囃子、衣装、踊り手等)とは一線を画している「飾り」がメインであり、また時代に合わせて様々なデザインを用いているため、現在のところ国の文化財には指定されていない。


 とはいえ、その歴史は伊達政宗公の治世にまで遡ることができる。

 四百年前には既に七夕まつりを題材にした歌を残しているのだから、立派な伝統だ。

 祭りの起源は江戸から七夕を輸入する形で取り入れたようだが、やがて飢饉による死者を悼み、また自分たちを鼓舞する目的が加味されることになる。


 天明三年(一七八三年)、この地域ではおよそ二十五万人の死者が出たという。

 この年に何があったのか、有名どころで言えば四月以降断続的に火山活動を起こしていた浅間山が大噴火を起こした。こんにちでも、東大出版会による火山資料において、「日本火山災害史上最悪の惨事」であったと記録されている。


 関東地域は水害、土砂、火砕流などに見舞われ麓の村々は壊滅的被害を被り、東北では冷害に見舞われ大飢饉となった。

 また、天保の大飢饉として知られる江戸時代後期、およそ三年から五年間かけて最大化した最悪の水冷害では、同地域で三十万人が犠牲になったという。


 そんな苦難を乗り越えるべく、静かに祈りを捧げる祭りなのだから、一般的に連想する祭りとは趣を異にするのも納得というものだ。これはこれで、無形文化財と認められる日が来ればいいなあと思う今日この頃である。


 さて、当の七夕まつりであるが、今年も規模を縮小し地域周辺住民を対象に開催されるようである。その地域、本来の祭りの姿に立ち返る良い機会と捉えたい。

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