七月二十一日 ロシアがほぼ世界最低気温を記録したようです

 ユーラシア大陸にどーんと寝そべる広大なロシアの大地は世界最大の国土面積を誇る。

 しかし、その国土の大半が北緯五十度線以北という過酷な環境下にあり、夏至の日照時間がおよそ十六時間余りで冬至では八時間がせいぜいという人間が楽に生活するには決して恵まれた土地とは言い難い。


 中学の地理でほんのりと習うロシアは、一言でまとめると「ほぼ極寒の地」である。そして、そんなほぼ極寒の地ロシアは、「ほぼ世界最低気温記録」保持国でもある。

 その華々しいコールドレコードを順を追って見てみると次のとおりである。


 天保九年(一八三八年)一月、ロシア帝国期ヤクーツク(現在のサハ共和国の首都)でマイナス六十度を観測。


 明治十八年(一八八五年)一月、ベルホヤンスク(現在のサハ共和国)でマイナス六八・八度を観測。


 明治二十五年(一八九二年)二月、同じくベルホヤンスクでマイナス六七・六度を観測。


 昭和八年(一九三三年)二月、ソビエト連邦下オイミャコン(現在のサハ共和国)でマイナス六七・七度を観測。ただし、この辺りは記録が訂正されていたりと不確定要素が含まれている。


 昭和三十二年(一九五七年)五月、南極アムンゼンスコット基地(アメリカ管轄)でマイナス七三・六度を観測。


 昭和三十五年(一九六〇年)八月、南極ボストーク基地(ソ連管轄)でマイナス八八・三度を観測。


 昭和五十八年(一九八三年)七月二十一日、同じくボストーク基地でマイナス八九・二度を観測。

 この記録は衛星解析の結果同じく南極でマイナス九八・七度を観測するまで最低気温世界一を保持していた。(衛星解析は二〇〇四年から十六年までの気温を集計した数値)


 そもそも、サハ共和国が世界で一番寒いと言える上、最終的には南極が全てを掻っ攫っているので、やっぱり「ほぼ極寒の地ロシア」の「ほぼ世界最低気温記録」という表現になるのは致し方ない。

 米ソの冷戦は、どうやら気温も競っていたらしいということが、こういうことからも窺えるという楽しい発見があった。


 理論上、マイナス二十度もあればバナナで釘が打てる。マイナス三十度にもなれば普通に呼吸ができなくなる。ドライアイスだってせいぜいマイナス七九度程度で、マイナス九五度ではガソリンが凍る。

 マイナス百十五度で理論上、純度百パーセントのアルコールが凍るらしいので、世界最低気温はドライアイス以上、アルコール未満ということになる。


 そんなところで、皇帝ペンギンとアデリーペンギンは生息しているのだから、人類を遥かに超越した生き物だ。

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