五月二十二日 うなぎの未来を考える日

 背開きか腹開きかで、ある程度地域おさとが知れる大事な日本食文化「うなぎ」。その歴史は古く、新石器時代の古墳からも骨が出土しているという。

「風土記」や「万葉歌」にも記述があるというから、昔から身近な食材だったことがうかがえる。

 因みにそれは大伴家持おおとものやかもち(出たよ、名門貴族とも氏)が夏の暑さにやられる友人に向けた「石麻呂にれもの申す 夏痩せにしという物ぞ 武奈伎むなぎとりせ」という歌だ。

(私は石麻呂に言ったよ、夏バテに効くからウナギを食べなさいと)


 当時から、うなぎの滋養の高さは広く認知されていたようだ。(あの見た目を「これ、旨そうやわ!」と思って食べた最初の人に会ってみたい)


 かくいう私は、小さい頃は柔らかい小骨が喉にひっ絡まるので苦手な食材であったが、年齢を重ねるごとに鰻重うなじゅうの貴重さと高価さを理解し驚愕するこの頃だ。


 日本で主に食されるニホンウナギは、どうやら、日本からおよそ二五〇〇km離れたミクロネシアの西マリアナ海嶺かいれいで産卵しているらしいことが分かったのは、平成十七年(二〇〇五年)のことである。その後、日本を代表するうなぎ研究の第一人者、魚類学者の塚本勝己氏率いる研究チームが、二〇〇七年に初めて天然ウナギの卵採取に成功している。


 やった、うなぎの完全養殖できるかも! という大きな期待が持てる発見だったのだが、実際の道のりは非常に険しいと言わざるを得ない。


 西マリアナ海嶺で、おぎゃーと生まれたウナギの初期形態は自力遊泳ができない。非常に無防備な状態でプカプカと海中を漂っているのである。

 運よく河口付近にやってきた個体がシラスウナギへと形態変化し、しばらく河川生活に入る。

 そして、このシラスウナギに成ろうかというチビちゃんたちが近海で密猟乱獲の被害に遭いまくるので、ウナギ全体の個体数が大幅に激減する事態となった。


 二〇一三年には、環境省レッドリスト——絶滅危惧種IB類にカテゴリー変更され、更に翌年には国際自然保護連合がニホンウナギを「絶滅する危険性が高い絶滅危惧種」に指定している。

 余談だが、世界にはおよそ十九種のウナギが生息しているという。ニホンウナギはその中の温帯気候に生息する「比較的よく食べられている種」の一つである。他には、ヨーロッパウナギとアメリカウナギも食用として世界的に広く流通しているそうだ。

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