四月二十八日 労働安全衛生世界デー

 大正三年(一九一四年)といえば、第一次世界大戦が勃発した年だ。

 きな臭い世界情勢のなか、四月二十八日。カナダで初めて「包括的労働者補償法ほうかつてきろうどうしゃほしょうほう」が制定された。いわゆるである。


 戦争そのものは制定に直接関係なかったのだが、一四九七年に初めてヨーロッパ人が北米大陸に上陸してからおよそ四〇〇年、一時期盛況であった人の流入が、ぴたりと止まった時期がある。


 何事かと思えば、ヨーロッパ大陸で戦争しまくっているので移民してる時間がありません、ということらしい。


 その間に、アメリカが着々と力をつけ、カナダに軍事侵攻ちょっかいをかけることもあったが、何せ、お隣がイケイケどんどん急成長するので、カナダからどんどん労働力が出て行った。


「え、ちょっ、ちょ、待てよ!」


 カナダが焦っていた時期に、移民担当内務大臣に任命されたシフトンのおやっさんが、逆転の一手に打って出た。それが、「農業やるならカナダへおいで!(ただし、白人に限る)」政策である。


 結果、むちゃくちゃ移民が押し寄せた。


 戦争ばっかしているヨーロッパで、瓦解寸前の超大国オーストリア・ハンガリー二重帝国から逃げてきた皆さん。

 農業大国ウクライナから移住してきた皆さん。

 ロシアから宗教迫害で逃げてきた皆さん。

 色々いたが、一九一三年には、カナダ西部に総勢五十万人を超える大所帯がひしめいていた。


 その後、カナダ大陸横断鉄道の建設計画が持ち上がると、東洋人——主に中国人(当時は清国人)、インド人、日本人が労働力として加わった。


 すっかり人種のと化したカナダでは、人種差別も同時に横行する。残念なことに、この頃から東洋人は特に槍玉に上がっていた。

 そんな時代背景のカナダで、初めて労災法が制定された四月二十八日。それは、第一次世界大戦開戦のわずか三ヶ月前の出来事である。

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