独白
ヤグーツク・ゴセ
凍りついた孤独
僕は惨めな人間だ。心にぽっかり空いた穴からぐちゅぐちゅとえぐられる。僕に居場所はなくて、どこまでもどこまでも逃げてしまいたいし、どこまでも消えてしまいたい。藍の空とか良いように言っても見えるのはただの焦げた夏の空だけ。京都駅構内の雑踏から逃げるように、長い長い階段を駆け上る。夕日に照らされた階段は一段一段が生きているような赤色に染まる。時々自分が誰かわからなくなって怖くなる。階段の頂上から京都駅の雑踏を見下ろす。
君はもういないから、僕はひとり暗闇を貪るように生きる。潰された僕の心臓は人々を呪い始めた。霞んで見える他人の心を卑下してしまうようになった。
午前3時半過ぎ。「私、もう死にたいの。」
その言葉は実に意外で実に明白な言葉だった。
夜明け前の沈んだ夜に浮かぶその言葉を耳で何度も再生した。音ひとつしない夜の灯台でそれを聞いた。海琴は小学校の頃からいじめられっ子だった。海琴が周りから無視されていたのを僕はよく感じていた。やるせない気持ちになりながらもただそれを見ているだけだった。中学になってからは人間関係が上手くいっているように見えたが噂で聞くのは海琴の悪口ばかり。結局は中学を辞めていった。他人事のように思っていたが辞めたと聞いたその日のご飯の味がまるでなかった。それから幾らかの月日が経った、海琴のことなんて忘れていた。僕は高校生になっていた。通学のため、だるいくらい青い海を横目に海岸線を歩いていたある日、君をこの青い景色には似つかない白く塗られた灯台で見た。昔の君の姿を思い出した。一瞬僕にグロいほどの吐き気が刺す。謎の責任感からか、強き風が背中を押す。僕はこれまで何をしていたんだ。
深い風が僕をどこまでも強く押す。
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