20話 シュレイドvsピスティ


 「勇者パーティーのプリースト、ピスティ……」




 ついオウム返ししてしまう。




 今さっき天空王国四天王の処刑人とかいう強敵と戦ったばっかりなのに、休む間もなくビックネームと戦わなければならないらしい。




 まるでボスラッシュだ。




 「へっ、燃えるぜ。」




 人差し指を前に、親指も開いて、あとの指は閉じて———右手で銃の形を作る。


 それをピスティに向けて狙いを定める。




 まずはヴォルカニックスピアで力量を測る!




 「おっと、魔法は使わない方がいいですよ。」




 余裕たっぷりの言葉に制される。


 この何もない空間で、奴の声は異様に響いた。




 「この空間は相手を閉じ込める私の固有魔法。ですが貴方の魔法を持ってすれば簡単に脱出出来るでしょう。」




 含みがある言い方だ。




 「何が言いたいんだ? 」




 聞くとピスティは指を口元に当ててクスクスと笑い、




 「この何処かも分からない場所で無闇に魔法を使っえば、もしかしたら、外にいる誰か———そうですねぇ、某悪役令嬢さんなんかに当たっちゃうかもしれないですよねぇ? 」




 白色の虹彩が、俺の心を見透かしたかの様に見開かれた。




 魔法が封じられた。


 いや別に使おうと思えば使えるのだが、あれを言われちゃヴォルカニックスピアだのゴーズフレアだのの攻撃系は憚られる。




 結局身体強化でステゴロするしかなくなってしまった。




 ちっ、仲間を人質に取られた様なもんじゃねぇか……




 「仮にも元勇者パーティーの人がこんな汚い真似していいのかねぇ? 」




 「私、お仲間を想う魔王の残骸様の優しき心に涙が止まりませんわ……」




 「笑い堪えながら言いやがってクソが……」




 俺は殴りかかった。




 「!?」




 眼前、全てが白に染まる。


 何もない真っ白な空間ではあるが、それでも白く、




 どうやらピスティが着ていたローブを脱ぎ、俺の頭に被せてきたらしい。




 くそっ、こんな目眩しすぐに破って———




 「ふふっ、真っ直ぐ突っ込んでくるなんて素直ですね。」




 後ろから声が聞こえる。


 それは俺が頭に被さったローブを破いたのと同時だった。




 首に太い腕が回される。


 絞め技だ。




 勇者の腕も俺の首を絞めてきたが、勇者パーティーは首に何か執着があるのだろうか?




 そもそも一つ前に戦った処刑人も異様に首を切る事に執着してたし……




 どうにか首を回して敵を見る。




 白いローブを脱いだピスティを見ると、たわわな胸と、隆々な筋骨が露わになっていた。


 スポーツウェアの様な下着に色気は無く、別に嬉しいとかはちょっとしか思わなかった。








 くっ、動けない……二重の意味で。




 その、ピスティのたわわなお胸が背中に当たっているのだ。




 「く、くそぅ、これじゃあ動けないぞぉ〜」


 「うふふ、昇天させてあげますわ。二重の意味でね。」




 かぷっ


 耳を噛まれた。




 「あっ……」




 甘美な刺激に思わず声が漏れる。




 「うふふ、お次はこうです。ちゅぱっ」




 レロレロ、


 唾液をたっぷりと纏ったピスティの舌がシュレイドの右耳を舐め回す。




 今まで感じた事のない刺激に全身から力が抜けていく。




 「うっ……くぅうう……」




 と、ぷつりの何かが切れた。




 いや破けたというのが近い。


 舐められていた耳から血が出ている。




 「レロ」




 ピスティが舌を見せつけてくる。


 その赤い舌の上には、黒く長い針が乗っていた。




 「もう立ってもいられないでしょう? 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る