第3話 国立聖歌騎士育成学園

国立聖歌騎士育成学園


それは、国に敵対する生物が攻めて来た時、対応できるだけの軍事力を育成するため設立された学園である。

毎年数多くの受験者が、日本中から集まり試験に臨む。

試験は半年に一回、欠員が出るたびに補填されていく。

国民の前衛に立ち、命を守らなくてはならないため、そのための知識取得、技術、戦闘力を身に着けることはたやすくはない。

ある者は一週間で、一ヶ月で、半年で挫折し学園を去っていく。


入学希望者は10歳からで、最高25歳まで入学試験を受けることが可能だ。

卒業試験を受けれる(学園にいられる期間)年齢は30歳まで。

軍事戦略科、情報技術科、聖歌教育科の3つの科に分かれており、それぞれがエキスパートとなるための教育を受ける。

日本に古来から存在した先に入学したものが上級生であるという制度は廃止されており、それぞれの科で成績優秀者、戦闘能力が高いものほどクラスが高くなる。


Cクラス…300名 Bクラス…100名 Aクラス…50名 ×3学科 Sクラス…10名(総合)


2か月に一回、希望者がクラス昇級試験を受けることができるが、合格できなかった者はペナルティーが科せられ、次の試験を受けることができない。

Aクラスお呼びSクラスのみ卒業試験の受験が可能となり、試験に合格すると日本中へ派遣され日本を守る任につくこととなる。


大抵の学生は寮生活となり、男子寮と女子寮がそれぞれ学園内に建設されている。

もちろん、男子寮に女子が、女子寮に男子が入ることはできない。

女子寮と男子寮の間には食堂やジム、プール等の施設があり、交流する場合はその場所となる。

学園内にも食堂が二つ、カフェ一つ、広大な図書室や購買も管理されており、学園生活をする上で不自由はない。


校舎は第1~第4まであり、他に大きな物で2階建ての体育館・女子寮・男子寮・寮共有棟・競技場が存在する。

他にもテニスコートやプール、様々な運動に対応したグラウンドがあり、学園の広さを物語っている。


第1校舎:共有棟

第2校舎:A及びSクラス

第3校舎:BクラスとCクラス(聖歌教育科)

第4校舎:Cクラス


そして、誰がどこの所属なのかを表すため、学生服には名札とネクタイやリボンで見分けがつくように記号と色で分けられている。


聖歌教育:音符マーク

情報技術:本マーク

軍事戦略:剣のマーク


Sクラス:赤

Aクラス:青

Bクラス:緑

Cクラス:黄色


名札には、名前の前にマークと色が記載されており、他の人からすぐ確認できるようになっている。

たとえそれが10歳であろうが、25歳であろうが、クラスが上がれば上がるほど、能力者として有能なのだ。

だが、どこの世界にも有能であれば天狗になる輩や、自分が神にでもなったかのように振る舞う輩が存在する。

自分達の本来の役目を忘れ、自分こそが最強なのだと豪語するのだ。

そんな輩は遅かれ早かれ、学園からはじき出されることになるのだが、どの世代でもこれが変わることはない。

そしてその問題に対処するため、国立聖歌騎士育成学園は、点数制度を導入している。

理由のない遅刻や、サボり、生徒同士の揉め事、いじめなどは減点に、テストの成績、授業態度、大会での活躍や手助け等は加点される。

様々な行いに点数をつけ、持ち点を上げなければ、試験にも挑むことはできない。

この制度のおかげである程度の抑止力と向上心のバランスが保たれている。


——————————————————


「次に学園長、祝辞」


空と姫歌の出席している入学式は、順調に進行していた。

初々しい新入生たちが、ステージに上がる学園長を目で追う。

シャキッと見える黒のスーツ、昔どこかの軍隊に所属していたように思われる少し厳しめの顔と、50代くらいに見えるその背格好。

普通の学校の校長に見られる無駄な脂肪とおおらかな表情は、学園長にはなさそうだ。


「えー、この度は新入生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。学園長の大坂昇と言います。長ったらしい挨拶は無駄ですし私自信が嫌いですので、簡潔に申し上げます。当学園に入学したからには、国民の命を守る者になるという自覚を持ち、日々精神的にも肉体的にも精進するように。私からは以上です」


頭のいい人間は無駄なことはしない。

学園長が入学式の挨拶で一通りの事を説明しなくても、それはいずれ教室にて教員や先輩から説明される事だからだ。

そしてそのほうが、自分で調べたり聞いたりする自主性やコミュニケーションを育てたり、学生達にとっても学園長という存在が好印象となる。

この学園は他の学校とは違うのだと、学生自身が気を引き締めるキッカケにもつながるのだ。


「次に学園生徒代表挨拶、Sクラス神谷 徹」

「はい」


『あれ…、あの人確かさっきの…』

席から見た姫歌と空の目に映ったのは、間違いなく先程ぶつかり、入部を誘ってくれた人だった。

オレンジ色の髪、オレンジ色の目。

髪も短髪で間違いないが、前髪のピンはなく、服装も学生服ではない。

ビジュアル系の黒とオレンジ服装に身を包んでいる彼は、学生ではないように見えた。


「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。学生代表として挨拶させていただきます、神谷 徹と言います。皆さんは恐らく、学生服ではない僕にびっくりされた事でしょう。これは、学園である程度の知識と技術があれば習得できるスキルです。Cクラスでできるようになる人は珍しいですが、Bクラスで多くの人が習得できるようになると思います。

僕が言いたいのは、諦めず、積み重ねが大事である事。たまに息抜きもしながら、それでも着実に、前に進んでください。分からない事、問題にぶつかった時は、遠慮なく友達や先生、先輩を頼ってください。学園生活が楽しい物になるよう、生徒を代表し、挨拶とさせていただきます」


先輩らしい、しっかりとした挨拶。

爽やかでハキハキとした口調に、新入生の中にはもう、彼に憧れを抱いた人も少なからずいることだろう。

Sクラスの中には、人気がありすぎてファンクラブまで存在する人もいるらしい。



こうして、学園の入学式は幕を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る