燃ゆる鬼ノ城

美ぃ助実見子

孤立無援!! 誰か援軍を……。

 かつて鬼の国であった岡山県。


 人気もない山奥の某所にある鬼の岩屋で、かの者たちの動向を伺うもの達がいた。

 桃太郎とその一党に成敗された鬼の子孫である。

 大和王権時代より歴史が消え重ねた数だけ屈辱をなめ続けてきた者達だ。


『必ず桃太郎の子孫を打倒して、かつての栄光を取り戻す』


 その想いを旗印に雪辱を晴らすために機会を虎視眈々と狙っていた。


 初代鬼の棟梁の温羅から数え、四月一日を以てして、第九十九代目の鬼の棟梁となった美ぃ助は、その双眸を鈍く光らせてかの者からの報を待っていた。


 かの者達とは、この国から佐賀県を颯爽と独立に導き、『肥前さが県』と改めて、世に打って出ようとする者、ゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人。


 かの者達は煌びやかな容姿にして一風変わった思想を抱いていた。


『自由な発想の元に安寧の秩序と太平の世を目指す』


 その思想に同調する者達は、各地で独立行動に踏み切り集い、肥前さが県を盟主とする国家へと様変わりしようとしていた。


 その快進撃は続き、瞬く間に福岡を呑み込み中国地方へ進出を果たそうとしてまでいる。


 いずれ矛先は、中国地方処か、この国の帝都を目指す事に成るだろう。

 その偉大な状況をテレビで知った美ぃ助は、歓喜し同調して己も独立するべく準備を着々と進めていた。


 事前に佐賀県の動向を察して様子を伺っていた美ぃ助は、連絡役であるお茶目な『雨ダヌキ』を介して、代表者である勇者『肥前ロンズ』氏と接触を図ろうとしていた。


 が、一向に届かぬ吉報に苛立つばかり。

 遅い、遅いぞ、雨ダヌキ。もしや、どこぞで狸寝入りしているのではなかろうな。吉備団子まで与えたのに、何故か……。

 焦る美ぃ助は、否が応でも決断した。


「雨ダヌキは当てに成らぬ。先に我らが行動を示せば、いずれは合流できる」


 血気に逸る美ぃ助は、短絡的な行動に踏み切っていた。

 数多の同族を結集して即座に武装蜂起すると、岩屋から悠然と向かうは嘗ての鬼の居城である、鬼ノ城。


 鬼ノ城とは、鬼城山の頂に聳え立つ朝鮮式の山城。そこは既に観光地へと様変わりしており、容易く占拠する事が出来た。


 美ぃ助は、鬼ノ城に数多の幟をはためかせて、声高らかに『吉備国』を謳い、そして岡山県から独立を宣言した。


 兵糧を運び入れ門を固く閉じて籠城戦に移る頃には、その行動を知った桃太郎の子孫達が数多の犬と猿と雉を引き連れて大挙し押し寄せ、鬼ノ城を完全に大軍で包囲する。


 備中高松城水攻めの二の舞を踏む。清水宗治の様な武士の鏡にはなれない。


 瞬時に危機的状況に陥った美ぃ助は焦り青ざめ、櫓から大軍をオドオドと見詰めては震える身体を堪えきれず、【降伏】の二文字が浮かぶ中、必死な想いで願う。


 この決起と孤立無援の状況を知った、肥前さが県の助力を得られる事を信じ続けて……。

 雨ダヌキがこの状況を他県の同士に伝え、颯爽と援軍を引き連れて窮地を救ってくれる事を信じてやまない――。


 ここに集う同士達を信じ続けて……。

https://kakuyomu.jp/works/16816452219427045148

(了)


 雨様へ、面白そうなので思わず参加しちゃいました。

 粗が目立つ作品ですが、お納めください。

 悪しからず。


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