【22時間目】魔王様、さくら子のお願い事(リバイバル)のお時間です‼︎


「と、とりあえず躑躅森たちの事情は分かったわ。つまりは躑躅森のお父さまからうばわれてしまった7つの『固有魔法ミラ・マギア』と呼ばれる特殊な魔法を取り戻すために、たまたまその力を手に入れてしまった私たちと、その、恋愛関係になって!キスしなきゃならないのね……!」



その通りっ!

今しがた水原さんがまとめてくれたように、僕は今からここにいる全員(聖良のぞく)と恋仲にならなければならないのだ。

正直今の今まで恋愛などというものにうつつを抜かしたこと(べ、別にモテないとかそういうワケじゃね、ねーし!いやほんとマジで!)はないので、出来るならば恋愛強者が居てくれたら嬉しいな、なんて……。



「なんでそんな所々力入ってるんだ…?」



「う、うっさいわね!その……私は!誰か特別な異性を……か、彼氏!いた事ないから色々と分からないのよ!!」



「うわ〜〜さくら子、処女しょじょだぞ!処女!」



「あんたも同じでしょ!!」



まぁこの水原さんと種田さんは少なからずそういった経験は無さそうだ。

水原さんも種田さんも僕が言うのはおかしいとは思うけどかなりの美少女のたぐいだと思う(ラブコメものにブサイクなヒロイン居ないよね。だって面白くないし、売れないもん!とか言ってはいけない)。

これは完全なる邪推じゃすいではあるが、水原さんは大方その性格(ツン8.9割デレ1.1割配合)の影響か。

種田さんは、……言うまでも無いだろう!


では奈賀井さんと坂口さんはどうだろうか。

両者とも上記2人に引けを取らない顔貌かおかたちをしているが……。



「え〜〜…彼氏ってあれだよね?あの大根とかにつけるとうまいやつ」



「わっはっは!風花ちゃんそれは辛子大根からしだいこんだろう!彼氏とはあれだ!常に強者であろうと不断の努力と筋トレを欠かさず毎日おのれの体を研鑽けんさんしている者だろう!」



「あ〜〜孫◯空って事か。確かにブ◯マ彼女だもんね」



いやブ◯マ彼女にしてたのはヤ◯チャやろがい!


それはさておき、どうやら奈賀井さんも坂口さんも恋愛関係になった人は居ないらしい。

まあ奈賀井さんは掴みどころなさすぎて気付いたら雲取山くもとりやまとかに居そうだし、坂口さんはそもそも相手に求める条件が厳しすぎるし……。


とりあえず状況を整理してみようか。

僕はこれから今、この場にいる4人の少女と恋仲にならねばならない──そんで僕は恋愛体験はした事ない。そしてその相手である彼女たちも恋愛の"れ"の字もないど素人ときた。

んでんでプラス、あと3人(その内1人は学園のトップオブトップの生徒会長様)も攻略対象がいると。


あれ?これ割と詰んでない?

こんなんならラブコメハーレムものよりデスゲームものの方がまだ生き残れそうなんですけど。

誰か手取り足取り僕らに24時間365日引っ付いてアドバイスしてくれるチュ◯リッヒの相談窓口みたいな人居ませんかね?



「逢魔様……事情が事情ですから───私の"能力ちから"使ってもいいんですよ?」



聖良が心配そうに項垂うなだれる僕の顔をのぞく。



「いや、いいよ。聖良の力を使ったら彼女たちがかわいそうだよ。元々これは僕らの失態が産んだコトなんだし……できるならば平和的解決といきたいから」



そうだ。

元より僕はそのつもりでこの世界に来たのだ。


彼女たちはあくまで巻き込まれた側の人間であってこの事件の言わば被害者なのだ。そんな彼女たちを無理くりどうにかしようなどという暴挙ぼうきょは許されてはならないのだ。

まあだからといって僕にすんごい策が思い浮かぶわけもなく、とりあえず一旦は全ての事が白紙に戻りそうな雰囲気である。



「あ、そういえば水原さん、さっき僕らにお願い(*19時間目参照)あるって言ってたけどどんなお願いなの?」



「あ、そ、そうよ!私もあんたたちに聞いてもらわなきゃなるない話があったのよ!」



「いひゃいいひゃい」と種田さんのほほをつねる手を離すと(種田さんは離した反動でふっ飛んでいった。大丈夫ですかね…!?)水原さんはカバンから綺麗きれいな紙を一枚取り出した。

相変わらず紙がくしゃくしゃになってないあたり、初めて会った時に渡された入部届けの用紙の様に管理がすごく行き届いてる事がうかがえる。



「生徒会主導の学園大掃除。あんたたちにはこれのチームリーダーになって欲しいのよ」



僕と聖良が仲良く声を合わせて「学園大掃除?」とはてなを頭に浮かべると水原さんは「ちゃんと説明するわ」とかすかに笑った。



「黒瀬川学園に入学した新生徒は親睦しんぼくを深める意味で、一学年全員そろって広い学園のあちこちを仲良く手分けして掃除するっていう伝統があるらしいのよ。それで今回、クラスリーダーとしてクラス委員である私ともう1人のクラス委員が選ばれたわけなんだけど…さすがに私たち2人だけじゃひとクラス見回るのは無理があるでしょ?ただでさえ分散してるクラスの子たちに生徒会からの指令も聞かなきゃならない訳だし。だからあなたたちにチームリーダーをつとめて欲しいの」



「え、それって私たちもなんなきゃいけない系男子?」



奈賀井さんがふわっと会話に入ってくる。

これ系の話題には無縁むえんそうだが意外とやる気があるのだろうか。なんにせよ奈賀井さんに何かを任すのはいささか危険な香りがするが……。



「え、風花もやってくれるの?ありがとう。…でもいいわ。こっちの2人にお願いするから」



「え、なにそれヒーキ?」



贔屓ひいきじゃないわよ。まああなたに頼んでも数十分後には居なくなるでしょ?」とくすっと笑うと水原さんは改めて僕たちの方に居直る。



「それで、どうかしら?受けてくれる?」



「もちろん!さっきも言ったけど水原さんたちの協力無しに僕らも目的が達成できるとは思えないからさ、どんどん僕らを使ってよ!」



「それでその大掃除はいつ行われるのですか?」と聖良が僕の横からたずねる。

そうだ、確かにそれならちゃんと準備とかしなきゃならないし1日は貰いたいな。



「…………明日よ」



「え?水原さん?なんて?」



「………だから明日よ」



あっ。

その時僕は全てが分かった。

なぜ水原さんが数多あまたいるクラスメイトを差し置いて僕たちに頼んだのか。


それはつまり─────



「なるほど……僕らは断れないから、か」



☆急な頼み事を頼んで断れないような相手は作っとくに限るね……!!──────



───────────────────────


【登場人物紹介】


●躑躅森 逢魔


魔王の息子で主人公。

なんかやたらめったら頼み事をしてくるさくら子の心中を知り、ちょっと複雑な気持ちになる。でも断れないのでなんとも言えない。



●躑躅森 聖良


逢魔の幼馴染でお付きのメイドさん。

さくら子の心中は察していたが別に無理なお願いでもないし、借りは作っとくに限るので割とお互いどっこいどっこい。



●種田 冬火


1人目の能力持ち厨二コミュ障ぼっち少女。

今回ほっぺをひっぱられてるだけなので自己紹介欄いるか?と疑念を持つ。

ぶっちゃけこれ書くのめんどいから無くてもいいと思う。



●水原 さくら子


2人目の能力持ちツンデレ貧相クラス委員少女。

ついに今回その打算的な性格がバレてしまったお人。でも彼女は一人で仕事を抱えがちなので、そんな彼女が人に頼み事をするのは実は珍しい。

本人は気づいてないが意外とみんなに対しての親密度は高い。



●奈賀井 風花


3人目の能力持ち奇想天外奇々怪界魑魅魍魎少女。

さくら子に自分もやるのかという質問をするだけで逢魔にやる気があると見なされたがその実やりたくないから聞いただけである。



●坂口 杏子


4人目の能力持ち筋トレマッスル少女。

もはやセリフも無いのにこの蘭いるのかいっちゃん疑問に思う。ちなみに彼女は何していたのかと言うと空気イスをしながらひたすらテーブルを上げ下げしていた(ちなみにあげてるテーブルは冬火との相席なので彼女はポテトが全然食べれなかった)。



●孫◯空


みんな知ってる国民的ヒーロー(?)。

人が死んでもドラゴ◯ボールで生き返らせればいいと大言を吐くあたりちょっとサイコの気質を感じる。まあ元々戦闘民族だし仕方ないような気もするが。

もちろん彼女はブ◯マではなくチ◯なので注意。



●ブ◯マ


ヤ◯チャの元カノ。

別れた途端ベ◯ータに惹かれ相思相愛になるのは当時を知ってる人ならみんなたまげただろう。

後最近の若い人は知らないと思うけど亀◯人に局部を見せつけるという少年誌にあるまじき行為をしたお人。



●ヤ◯チャ


すっかりザコのイメージがついてしまった砂漠のハイエナ。

最初はなかなか活躍していたが回を重ねるごとにインフレについていけなくなりほぼ噛ませ役に。

特に人造人間編は酷いと思う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る