【12時間目】魔王様、お友達になろうのお時間です‼︎


ここ、私立黒瀬川学園の一階にある昇降口しょうこうぐちの自動販売機前にて、僕と水原さん、そしてくだんの彼女───奈賀井 風花が一堂に会してしまった。


なんてことだろうか。

いや、こんなこと言うのはとっても失礼だとは思うけどこの人絶対ノーマルな人ではないよね、絶対、うん。

だって普通家に財布忘れた事を忘れて、自販の前に来て更にそこでほうけるなんて事ある?

ないでしょ。さすがに。



「いえ、逢魔様。現に目の前の彼女────奈賀井 風花が良い例です」



どこからか聖良の声がするかと思いきやその刹那せつな、目の前に声の主があらわれた。いや、現れたというよりか生えてきた……?

いやどこに居たのよ。忍者かなにか?



「あ、あんた……どこから出てきたのよ」



まるで僕と思考がシンクロしたかのように水原さんが聖良に聞く。



「自販機の下に居ました」



「いやなんでそんなとこに居たのよ!?妖怪かなにか!?」



「妖怪だけに奈賀井 風花に用がありましたので……」



聖良はぱっぱっとスカートについたほこりはたくと、背筋をすっと伸ばし、僕らに視線を合わせた。

その姿はまるで「え?今の今まで自販機の下に居た?そんな事ありえないじゃないですかw」と言っているような堂々っぷりだ。



「いちいちうるさいわよ…言いたいだけでしょ」



水原さんが三度みたびため息をはく。

ただでさえ目の前の意味分かr…不思議な少女だけで手一杯なのに聖良というこれまたカオスな人間が現れた事に対してのやるせなさからだろうか。

ここは先に僕が話を聞いておこうか。



「ところで、聖良の言う奈賀井さんに用ってなんなの?……そんな自販機の下で待ち伏せするほど大事な用?」



その問いを待ってましたとばかりに聖良はかばん(今それどっからだしたんですかぁ!?)からいつもの例のごとくドラゴ◯レーダーを出すと僕に差し出してきた。

どうやらスイッチを入れろと言う事だがこれはもしや……。


僕は(若干じゃっかん)戸惑とまどいながら言われた通りスイッチを押した。

案の定、ドラゴ◯レーダーから数話ぶりに耳に馴染なじんだあの音が聞こえてきた。


つまりは、とどのつまりは、彼女───奈賀井 風花は───



「はいそうです逢魔様。3人目の能力持ちの方です」



「えぇ…………」



だ、そうだ。

正直僕はもうここまででなんとなく奈賀井さんの性格をつかめてしまっている気がする。いや、ほぼ確信に近い、そんなイメージが───だからこそ僕は今すぐこの場から逃げ出してしまいたかった。



「ふふっ。能力持ち?なにそれ?」



奈賀井さんが半笑いのふやけた顔で聞いてくる。

だよね。これ今から説明タイムだよね。そんでもって友達になりましょう!っていういつものくだりやんなきゃならない時だよね。



「つまりは私たちと友達になってほしい、という訳だす」



いやGA◯TZかよ。

じゃなくて早速ぶっこんだね。これですんなり第一の目標である"友達関係になる"が達成できれば良いんだけど………。



「友達?ふふっ。いいよ。私は奈賀井 風花。よろしくね」



ん、んん!!あれ!?

こんなすんなり達成できます!?

ソシャゲのチュートリアルミッションぐらいにはめんどくなると予想してたのに!?



「ちょ、ちょっとあんたちゃんと分かってる!?友達よ、友達」



水原さんが(僕も)懸念けねんしていた『そもそも友達って関係性、分かってます?』問題を聞いてくれた。

い、いやさすがに「友達ってなに?」なんて事はないよね……?



「え?あれでしょ友達。あの夕方とかに急に降る雨……」



「それは夕立よ」



う〜〜んと奈賀井さんが手をあごにあて、考える。

「あ、これだ」とこれまた分かりやすく手をぽんと叩くと水原さんに再び向かい合った。



「友達って素敵っぽい〜〜」



「それは違う夕立よ。なにちょっとタニ◯ユミさんっぽく言ってんの 



ほらやっぱりこれダメなやつだよね?

もう大喜利状態だもん、これ。収集つかないよね、これ。聖良さん……聖良さん!?


気づくと聖良は自販機に吸い込まれていった。

どうやらこの場は僕と水原さんにたくして本人は一抜けしたようだ。

僕も抜け出していいかな?……てか聖良さんいよいよ妖怪の類になってません!?



「あ、あれだ。思春期の男の子が朝起きるとよくなってるやつ」



「それは朝立t……って何言わせんのよ!このバカ!!!!」



「え〜〜水原さんが勝手に言っただけじゃん」と奈賀井さんが赤面した水原さんにられながら反論する。

ともかくここは、この場を収める事に尽力じんりょくした方が良さそうだ。



「ままま、落ち着いてよ水原さん!奈賀井さんも悪気があって言ってるわけじゃなさそうだし……ひとまずここは友達になれたって事で一旦教室に戻りません?ほ、ほらもう予鈴よれいも鳴りそうだし……ね?ね!?」



「そ、そうね」と興奮冷めやらぬ水原さんが奈賀井さんから手を離すと、「じゃあ私は先に戻ってるから!!ただでさえさっきの英語の授業分からなすぎて死にかけてたのに!」ともはや後半は独り言であろう言葉を残して足早に去っていった。


何はともあれ、この場は収まったようだ。

後は僕もここから離脱できれば───の話だが。


さすがにこの流れ(友達になりましょうなんて言った矢先)で奈賀井さんを1人残して帰るのはしのびないので僕は相変わらず呆けている奈賀井さんに一声かけた。



「さ、さあ奈賀井さんも教室戻ろうよ。次の授業始まるよ」



「うん」と一言だけ。

「あ、それと」とまた一言。



「さっきの授業ってあれだよね。スタッフ〜〜ってやつだったよね?」



「それは英◯。別に英語の授業にスタッフとかいないよ奈賀井さん……」



てかこの人呆けてるように見せかけて意外とこういう小ボケ入れてくるあたり結構頭回ってません!?

気のせいですかね!?僕の!?


とりあえずクラスに戻らないという選択肢はないので「ほら早く行こうよ」と僕は奈賀井さんをけしかけると早々と歩き出した。


が、またもや奈賀井さんが「あっ」と一言言葉にした。

もういい加減帰らしくださいよ!!今度はなんですか!?

僕はもうしびれを切らして今度こそ引っ張ってでも奈賀井さんを教室に連れて帰ろうと、振り向いた瞬間────奈賀井さんは何故か自販機を見つめていたのだった。



「あ、ごめん。友達くん。ふふっ。ジュース買いたいからお金、貸して」



「僕の名前は躑躅森 逢魔と申します。………さらに一言申し上げますと……………あつかましすぎるやろが〜〜〜いっっっ!!!!!!!!!」



☆そういえば逢魔自身自己紹介してなかったよね。え?自己紹介の回で名前知ってるはず?いやいや少なくとも奈賀井さんは聞いてなかったから─────



───────────────────────


【登場人物紹介】


●躑躅森 逢魔


魔王の息子で主人公。

水原 さくら子という新たな(真たる)仲間が加わった矢先、これまた奇想天外不可思議少女、奈賀井 風花に出逢い再びこれから始まるであろう波乱な生活を危惧する。



●躑躅森 聖良


逢魔の幼馴染でお付きのメイドさん。

前々回の登場人物紹介で次はボケ倒そうなんて意気込んでたのに前回登場がなかったため「今回はもう勝手にやってやりましょう」と決断した結果、まさかの自販から生えてきて吸い込まれるというもはや魔族だとか人間だとか関係なくなってしまった妖怪に成り果てた。



●水原 さくら子


2人目の能力持ちツンデレクラス委員少女。

相も変わらずツッコミ役に徹底してもらっているため、苦労が大きい。奈賀井 風花とは逢魔たちと接触する前から知り合いだったらしい。

それと意外や意外、勉学は苦手な一面も。

え?「この学校名門進学校だよね」って?さぁ、知らんな。



●奈賀井 風花


3人目の能力持ち摩訶不思議奇想天外自由奔放少女。

すごい漢文に見えるけど純日本人。

今までどんな生き方をしてきたのか謎なほど意味が分からない子。これからその素性が分かっていくかは逢魔たちの努力次第であろうか(投げやり)。



● タニ◯ユミさん


艦◯れの夕立役でお馴染みの人気声優さん。

トランペットも吹ける超人なため、イベントではちょくちょくその腕前を見せているらしい。

正直聴いてみたい(小並感)。

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