萩市立地球防衛軍

暗黒星雲

第1話 三式戦車チヌ発進

 世界最小と言われている火山、笠山。

 その地下にひっそりと設置されている地球防衛軍本部。


 この組織は、もちろん萩市の管轄である。

 予算不足の為、人員、および装備のほとんどが借り物となっている事が特徴だ。


 その、萩市立地球防衛軍の隊長室。デスクに座っているのは金髪ツインテの女児だ。青い瞳の彼女は、見た目は小学四年生くらいだった。

 その部屋へ、二十歳前後の青年が焦りながら走って来た。


「隊長。ララ隊長」

「どうした、正蔵」

「緊急事態です。佐賀県が独立宣言しました」

「ほう」

「神奈川県、大分県もです……あ……この二県は内戦が勃発したようです。神奈川は横浜と県が、大分は別府温泉と湯布院温泉が戦っています」


 正蔵の報告にララは不機嫌そうな表情を隠せない。

 何故ならば、今はちょうど三時。おやつの時間だったからだ。ララの目の前には、小皿に乗っているプリンがふるふると揺れていた。


「隊長、どうしましょうか」

「どうもこうもあるか。我々は地球防衛軍だぞ。他県での内戦に干渉は出来ん」

「しかし、我が萩市は維新のふるさとです。つまり、今の日本を築き上げた人物を多数輩出した地なのです」

「だから何だ」

「日本が内戦状態に陥って崩壊するなど、長州人として黙って見過ごすわけにはいきません!」

「落ち着け。私はとりあえず、プリンを食べる。話はそれからだ」


 そう宣言し、ララはふるふると揺れるプリンにスプーンを差し込む。その時、淡いピンク色の毛並みをした獣人がノックもせずに部屋へ入って来た。その獣人は狐型で女性だった。


「隊長、大変です」

「せわしいな。ビアンカ。何事だ」

「各地で独立宣言が発せられ、そしてその賛否を争い内戦が勃発しております」

「聞いている」

「その、内戦を操っているのは宇宙人です」

「宇宙人だと?」

「ゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人です。佐賀県を本拠としています。これは、あからさまな侵略行為です」

「なるほど……そういう事情なら捨て置けんな。超重戦車オイ発進」


 ララのその一言に正蔵とビアンカは唖然としていた。


「恐れ入りますが、隊長。超重戦車オイ、もしくは人型に変形したハイペリオンですが、重量がありすぎて関門橋を渡れません」

「……では、ティルトローターのヘリオスを用意しろ」

「申し訳ありませんが、ヘリオスは整備中で、今はバラバラになってます」

「ぐぬぬ……稼働車両か航空機はないのか」

「はい。現在用意できるのは、三式中戦車チヌです」

「それで構わん。佐賀へ向け発進せよ」

「了解!」


 笠山の山腹にある格納庫が開き、中から轟音を響かせて戦車が姿を現した。森林迷彩に塗装された三式戦車。予算のない萩市がチート技を使って手に入れた旧日本軍の戦車だ。


 彼らは今、地球を守るため佐賀へ向けて走り出した。

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