神さまだって休暇が欲しい!
虎のしっぽ
第0章 神の嘆き
プロローグ
休暇が欲しい。
何度そう思ったことか。
今日でついに100万連勤の大台を突破してしまった。
私だって好きで休暇を取らなかった訳じゃない。仕事がずっと途切れないのが悪いのだ。
死者の書類を朝から晩までひたすら読み、天国か地獄に振り分け、さらにはそこから転生の手続きもしなければならない。
これをひたすら毎日続け、積もり積もって100万連勤まで行ってしまった。
いかに神である私とはいえ、そろそろ休まなければ倒れてしまうだろう。
どーやって休暇を取れば良いのだろうか?
「ナリア様、この書類もお願いします」
そう言って、部下の天使ちゃんがとてつもない量の書類を置いていった。その中で一際目立つものが・・・・・。
「ちょっとまって、なんでこんなにめんどくさい手続きがあるのよ!これ1枚で3日もかかってしまうじゃない!」
そう言うと、天使ちゃんは顔を顰めて、こう言った。
「上級神であるムノヴァ様の手違いのせいで、本来死ぬはずのなかった人が死んでしまったみたいです」
「それによりそのムノヴァ様は謹慎になり、書類はたらい回しにされた挙句、ナリア様のところに回ってきたようです」
なんなのよそれ!!!
ムノヴァのやつ、ふだんは有能アピールしてるくせに、めんどくさいミスをやりやがって!
##
ふー、まあいいわ。とりあえず書類をちゃんと読みますか。
神部 しおり(27)
1992年5月21日生まれ
〇〇県〇〇市出身
趣味 旅行、読書etc.
特記事項
特殊転生処理
ん?なんだこれ?
「天使ちゃん?この特殊転生処理ってなんなの?初めて見るんだけど」
「はい。神界側の不祥事を重く見た創造神様の特例による今回限りの転生です。」
なるほどね。あの腰に重りをつけてる創造神様が腰を上げたのね。余程今回の件を重く見ているのだわ。
でも、今までも何回か手違いでの死亡例があったようだけど、その時は特例がなかったわよね?
なんで今回だけわざわざ創造神様が出てきたのかしら。この人間に何かあるのかしら?それとも・・・・・。
おっと、まだ天使ちゃんの話は続いていたわ。
「特殊転生は転生者本人の意思が最大限まで尊重されるものになります。神界規定の違反事項である神による元の世界への蘇生以外ならなんでも叶えることができます。」
大盤振る舞いね。そこまで創造神様に目をかけられるなんて本当にすごいわね。
「それで?私はどのように対応すれば良いの?」
そうなのだ。何故か作業目安時間の記載が3日になっていた。どんなめんどくさい処理なのだろうか。
「ナリア様はその方と面談を行ってください。どのような希望か書類にをまとめ、ナリア様のサインをお願いします。サインをした時点で転生が開始されますので。」
本当にこっちに丸投げって訳ね。
まあ、いいわ。
「了解よ。このままその人のところに向かうわよ。」
##
とりあえず、転生の間についたわ。
しかし、その子はどんなことを願うのかしら。生き返ること以外叶うのだから、なんでも願い放題よ。
あーあ。私の願いも1つだけで良いから叶って欲しいわ。
あら、ちょっと待って。
もしかすれば、もしかすると私の願いも叶うかもしれないわ!あれをこーすれば私の休暇が、、、。
ふふふ!この計画なら完璧じゃない!
「ふふふふ!」
「ナリア様、どーされました?」
おっと思わず黒い笑いが漏れてしまったみたいね。天使ちゃんが訝しげにこちらを見ているわ。
「いいえ、なんでもないわ。ちょっと面白そうなことを考えてしまっただけよ。」
そうよ!これがうまく行けば、念願の休暇が!!
色々と妄想しているうちに時間がたってしまい、ついに特殊転生処理される予定の魂が来た。
いいわね、ナリア。ここでミスをしてはダメよ。ここが1番の勝負どころなんだからね。
第一声目が大事よ。
ふーっ。行くわよ!
「神部しおりさん。あなたは先程亡くなってしまいました。あなたには転生する権利がございます。どのようなことでも叶えることができます。さて、あなたは何を望みますか?」
さあ、選びなさい。
私のより良い休暇のために!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます