真名を忘れた幽霊

楓 紅葉

桜の幽霊

幽霊の仮名

美桜みお花見行くぞ。」

花見って何だろう。外に出かけるという事は分かる。

「花見って何。」

「まあまあ言葉知らなくても楽しいところだよ。父さんと母さんと行こうね。」

車に揺られて揺られて外には桜が咲いていた。

「ねえまだ。」

「まだまだ後少しだからな。」

父さんがそういう。その間には母さんとしりとりやジャンケンで時間を過ごしていた。

「し、し…あ、新幹線。」

「んがついたから美桜の負けね。」

「むう。もう一回。」

「さてとついたぞ。」

そこの公園には桜が咲いていた。しばらく歩いた。しかし公園は広く疲れてしまいすぐにおんぶされた。階段を登って枝垂れ桜が見えてきた。

「もうここまでくれば大丈夫か。気をつけるんだぞ。遠くに行くなよ。」

私は桜を見ていた。綺麗だなって。あんなんだろう桜の影から人がいる。母さんより少しだけ小さい女の人だった。こちらに気がついたのか笑顔になってくれた。しかしここには誰もいなく周りの人は見えてなかったらしい。

「貴女だれ。あ、私美桜。」

「私は幽霊です。もしかして見えてるの。」

「うん。名前は。」

「…えっと忘れてしまいました。百年生きているので。」

「じゃあつけてあげるね。桜。桜の下。あ、さくのって言うのは。」

「じゃあそれがいいですね。」

という事で名前は決まった。嬉しがっていたからこちらも嬉しい。

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