【三月二十七日 1313】
つい先程まで俺の本体だった艇の番号が無骨な灰色のペンキで塗りつぶされていく。岸についていない方の番号と艦尾の名前は作業艇がやって来て消してくれているのだが、他の船の波に揺られて俺が思っていたよりも大変そうだ。そんな様子を見物しながら、ふと背後が気になった。振り返れば見たことのある艇の陰が一つこちらに向かってきているではないか。艇といっても作業艇よりもふた周りは大きな艇だ。そして入港ともなれば通りかかる遊覧船よりも大きな波が立つ。
「なんで今?」
波の動揺が小さな作業艇に伝わりローラーが先程よりもあらぬ方へ行くことが増えた。
「なあ、あと二十分遅らせなかったか? なお?」
二本煙突の四番艇に言葉をかければ、俺よりも小柄な【艦霊】が気まずそうにはにかんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます