第二章 頑張れ中津川先生

能力検知専門学校の入学式

緊張してたら始まってしまった。今は教頭先生が開式を宣言している。

普通ならこの時は紹介の練習をしながら開式の言葉を聞くところだろう。私はそんな余裕がない。なぜならこの後の校長の話に備えなければいけない。うちの校長は生徒に負けず個性が強い。年は四十歳前半。髪型は髪が薄いというかスキンヘット。まあ似合っている。ただそんなことが霞むぐらい変わってる。それのしわ寄せが私、先生歴三年目の中津川桜に来る。

だから多少浮くのを我慢して愛用の鉄パイプを持たされてる。二、三年生は知ってるからいいけど一年生とその保護者からしたら入学式に鉄パイプを持ち込むやばい人だろう。

絶望してたらもう校長先生の言葉。私がこんな辱めを受ける原因。

「最初にようこそ能力検知専門学校へ。」そこで一息つく。一言目は普通でよかった。「この高校で青春を大いにに楽しみ学問に励んでください。」今回は私必要ないのでは。そう思うと心なしか体が軽い。後は締めを言って「ただ髪がはげると萎えるのでストレスには気を付けてください。」…やりやがった。会場の中が相当寒い空気になってる中後ろの方から笑い声が聞こえる。

常習犯、この校長の嫁だろう。私は去年もこの担当をさせられてる。だから知ってる。

御伽症で鉄パイプを「了」の形にする。その上の部分で校長をステージから引きずり下ろす。ついでに教壇も動かしちゃったけどまあセーフだと思う。

次に校長を肩幅ぐらいの大きさの「円」の形をした鉄パイプで行動を封じる。イメージは簡易手錠。さてここまでで校長はもう動けない。あとは後ろの方にいる校長の嫁を探し出すだけ。校長がなんか言ってるけど無視。この件の責任は教頭先生が待ってくれるはずだから私にしわ寄せがくることはないはず…

下の方からだと死角があって見えにくいので痛む胃をさすりつつ上に行く。鉄パイプをまた「了」の形にする。今回は前と違って二角目を長めに作った。屋根の出っ張りに引っ掛ける。

それから二角目を短くしてくことでエレベーターのように上に行く。屋根まであと一メートルぐらいになってから見つけた。

流石に騒いで居心地が悪くなったのか逃げようとしてた。急いで降りて「了」の形を作って無理矢理引き寄せる。


その後は何もハプニングはなく終わった。生徒退場の後、嬉しいことに二、三年生がねぎらってくれた。これが唯一の救い。

さてこの後直ぐに初めてのホームルームだ。

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