僕の青春?

@harusuisei

第1話

 朝、目を覚ました。今日は月曜日だ。つまり、学校がある。

 土日のように、ベッドでゴロゴロし続けたい、という欲求を振り払って、なんとか体をベッドから引き剥がす。

 歯を磨きながら、鏡を見ると、寝癖がついたことで、髪の毛がぼさぼさになっていて、目が半分くらいしか空いてない人の顔があった。無論、それは自分であり、いつも通りだ、という確認であった。強いて言うなら、今日の髪の毛は、こう言う形で髪の毛をセットしましたか?と言うほどの芸術作品であったことぐらいだった。

 自分は、髪の毛の芸術には、これっぽっちも関心がなかったので、歯を磨き終わってからすぐに頭を水で濡らして、整えた。

 昨日買っておいた食パンを焼き、食べる。ひと齧りしてから、バターを塗り、全て食べた。美味しかった。

 トイレを済ませてから、まだ時間が15分ほどあることを確認して、YouTubeを開いた。Bluetoothイヤフォンを接続してから、気になったものを、適当にタップし、視聴する。

 耳で聞きながら、画面を見ることを放棄しつつ、学校の準備をする。

 なんとか準備が終わり、時計を見たら、走って学校にギリギリに着くであろう時間にもうなっていた。

 慌てて鞄を担ぎ、イヤフォンを外して、ケースに入れ、玄関に向かう。

 途中でハンカチ、ティッシュをポケットに入れて、水筒を掴んで、靴を履いた。

「行ってきまーす」

 慌てながら奥にいる家族に叫び、ドアを閉じるだけ閉じ、鍵もかけずに家を飛び出した。鍵は誰か閉めてくれるよ、多分。

 交通事故などを起こさない程度に走り、赤信号に苛々しながら、学校に滑り込んだ。  本当に滑ったわけじゃないですよ。

 教室になんとかチャイムが鳴る前に入り、自分の席についた。荷物を適当に机の中にしまい、鞄をロッカーに入れた。

 COVID−19のせいで、手洗い、うがいもしなくてはならず、手洗い場へ向かう。

 うがいまで済ませたところで、チャイムが鳴り出した。

 あれ、ヤバい。 

 とにかく全速力で教室に向かう。

 皆が立ち上がっているのが見え、後ろのドアから滑り込んだ。そのスペードのまま、自分の席に向かい、なり終わる前にはなんとか自分の椅子にたどり着けた。

 荷物を滑りおろし、起立の状態になる。

 先生、そんなにじろじろ見ないでください。視線が痛いです。

 学級委員の挨拶で皆が座り、それに合わせて自分も座る。

 HRがいつものようにすんなりと進行する。その間に話が少し止まる時は堂々と、話している間は少し音を抑えて、机の中にしまえるだけの荷物をしまった。

「じゃあ、一時間目の体育に遅れないようにー」

 先生が言った。そんな見つめて言わないでくださいよー。

 先生が去ると、少しづつ、いつもの放課のざわめきが戻ってくる。

 そんな中、僕は、遅刻ギリギリだったということは誰にも触れられず、一人で準備の続きをしていた。そんな遅刻魔では、ないんですが。

 予鈴2分前になった。

 女子は教室をそそくさと出ていき、隣のクラスの男子たちが、入れ替わりでゾロゾロと入ってくる。

 ざわざわとした雑談が次第に大きくなり、そろそろ先生来るかな?と思っていると、

「放課じゃない!静かに着替えろ!」みたいな感じのことを近くのクラスの先生が言いにきた。

 仲のいい知り合いは、他の知り合いと喋っていて、ぼっち気味僕は、叱られる前から黙々と着替えていたので、良い迷惑だ。そんなに大きな声で叱らなくて良いじゃない。

 一時間目の体育は、サッカーだった。結構好きで、そこそこできた。そんな感想しか抱けない。

  自分のクラスに帰る時、別のクラスが既に着替え始めていて、女子の着替え教室の、まえになったら教室から目を背ける。

 たとえ、不可抗力ででものじてしまったら、女子から詰め寄られることはもとより、もし気づかれなくても、ある男子から女子へリークされるか、そのことでかなりの間脅されるのは目に見えてる。

 その着替えの間、僕の友達の一人が僕に言った。

「お前、吉田のこと好きだろう?話しかけるか、覗いたか?」

 一気に自分のボルテージが上がる。

「バカっ!お前何言ってんだ。そんなことできるような男に見えるか?」

「ミエマス、ミエマス。ソンナオトコニミエマスヨー」

「思ってないなら棒読みはやめろ!」

「わかった。わかった。だけれど事実として、そろそろ行動起こしとかないと、ヤバイぜ?」

 少し心にヒヤッとしたものを感じた。

「な、なんで?」

「そうわかりやすく動揺するなって。E組のイケメンAが狙っている可能性が出てきた。」

 「マジですか…。」

「こう言っちゃなんだが、お前はイケメンAに何一つ勝てていない。」

「おい!」

「唯一の長所が、勉強多少できるくらいだろ。だから、早く行動を起こせよ。」

「わ、わかった」

「じゃあな。」話しながらも、ちょっとづつ着替えていた友人は、体操服とかをまとめて、うちのクラスから出て行った。

 次は数学だった。数学の教科書等+持ち込んだ問題集を出しておく。ギリギリの時間であることを見て、水筒を急いでがぶ飲みした後、手洗い場へ向かった。

 やばいかなーと思っていると案の定、手をハンカチで拭いているときにチャイムが鳴った。

 僕を含めた、手洗い場にいた数名が、はっと顔を上げて、走り出した。

またしてもなり終わる前にギリギリ、自分の席の前に滑り込んだ。

 学級委員が全員揃ったのを確認してから号令をかけた。椅子を引く大きな音が教室をしばしの間包みこんだ。

 皆がノートを広げたりしている中、僕は最後列という立場を最大限に活用して、持ち込んだ数学の問題集を広げた。

 ただ、どうしてもいつもより手が止まる。いつもなら、先生が面白そうな話をしている時以外基本的に止まらないのだが、先程の友人の言葉が心に引っかかってしまっていた。

 話しかけることから始めよう。じゃあ、次の放課で狙うか。ということを考えて手を動かし始めた後、では、なんて話しかければいいんだ、という疑問が成り立ち、それを考えようとしても、先生の言葉がその集中の切れた隙を狙って、耳に入ってくる。

 やめだ。放課になってから考えよう。

 そう決めて、頑張って手を動かした。

 いろんな思いと格闘していると、気がついたら、終わりの時間になっていたらしい。チャイムが鳴った。

 学級委員の号令があって、先生が職員室へいなくなり、放課となった。

 先ほど決心した僕は、隣のクラスへ向かった。

 バクバクとなる心臓をなだめながら、もくてきのくらすにたどり着いた。

 不審者にならない程度に、チラチラと、中を伺う。

 僕は自分のクラスに帰った。いやね、次の授業の準備しないといけないし、あと、友達と話している人に話しかけるのってなんか嫌やん?目立ちそうやし。

 次の授業の間は、次こそは...という決意を高めるも次の放課に行ってみると、クラスにはいなかった。しょうがない、という気持ちと同時に、少しホッとしていた。

 だが、帰り道、向こうから歩いてきた。友達と一緒にトイレにでも行っていたらしい。僕は道を開け、顔を下に向けて、歩いた。目は合わせら流のは無理だって...。

 次の授業の次は、ランチだ。腹をすかせつつ、最後の力を振り絞る。

 普通に授業が始まり、普通に内職して、普通に授業は終わった。

 ランチボックスを取りに行く当番の班員が向かっている間に、掃除当番である自分は、手を洗いに手洗い場へ向かった。ものすごい量の人だった。もみくちゃにされながらも、手洗い場で手を洗い、うがいをして、ハンカチで手を拭きながら、自分のクラスに帰った。

 教室は、何故か知らないが空いていて、数名しかいなかった。

 自分の席につき、ポケットから、今ハマっている本を取り出した。視界の端では、ランチボックスが運び込まれた時すぐにわかるように、教室の入り口を捉えている。

 しばらくして、ランチボックスが教室に運び込まれた。

 本を、表表紙を下にして、机の上に置きながら、立ち上がった。

 何度も自分のランチがCなのかDなのかを確認してから、ランチ券を回収ファイルに入れて、自分のランチを取った。牛乳と共に。

 ご飯を食べるときの挨拶も学級委員が行い、皆が食べ始めるも、すぐに、騒がしさで満たされた。

 早く食べ終わった僕は、容器を片付けてから、食べ終わりの挨拶を学級委員が呼びかけるまで、本を読むことにした。先ほど食べる前にポケットに滑り込ませていた本を取り出す。

 一、二ページをめくっただけでもう食べ終わりのチャイムが鳴った。

 学級委員が号令をかけ、食べ終わっていた人が容器を片付けて、まだ食べているひとはかきこみ、周りにおちょくられ、話しかけられる、そして、諦めて容器を返しに席を立つ。

 いつものことではある。だが、行動を起こそうと心臓がバクバクしている自分にとって、とても新鮮に感じられた。ああ、あいつは食べるの遅いな、等々。

 かくして、僕は何もやることのない昼放課に突入したわけだが、とりあえず、吉田のクラスを覗いてみようと思った。

 が、辞めた。ま、まあ、授業後もあるし、その時にでも捕まえればいいだろう。

 勿論、それには、出来るだけ変化を避けたい、という自分可愛い精神が少なからず影響していただろう。

 そして僕は残りの昼放課を、教室で、教室に残った少数派の雑談を聞きながら読書をする、ということで消費した。

 

 予鈴が鳴った。窓から校庭を覗くと、先ほどまでバラバラに散っていた生徒がぞろぞろと校舎に入ってきていた。まもなくして、外で遊んでいた組が教室に入ってきた。一気にクラス内のざわめきが増す。

 自分は次の授業の準備をしてから(といっても机の中から出すだけだが)、本を再び読み始めた。先が気になってるのだ。

 今日は五時間である。珍しいことに。なので、この授業が終われば帰れる。

 そのためか、皆の顔が少し明るい気がする。あ、いや、これは普通に太陽の光か。

 少なくとも僕は嬉しい。家に長く居れるのはいいことだ。

 そして、最後の授業が学級委員の掛け声から始まり、掛け声で終わった。特にいつもとちがうことはなかったのだ。聞くことが中心で、正直言って面白みを感じない、いつもの感じであった。

 授業が終わった僕は、とりあえず帰りの準備をした。今行くと目立っちゃうからさ、後でいいと思うんだよね。

 帰りの会が学級委員司会で、難なく進行していく。明日の授業の持ち物が発表された後、先生の話に移る。

 先生の話す、ありがたそうな話を、ありがたそうに聞いてから、学級委員が帰りの挨拶の号令がなされた。

 帰りの挨拶をした後は、机を教室の後ろに下げる。その後、パラパラと掃除当番以外や、教室以外の掃除当番が散っていった。

 僕は教室の、箒当番であったので、掃除道具入れから先があまり曲がっていない箒を取り出して、静かに掃き掃除を開始した。

 たまたま教室の窓をみると、いつのまにか全開にされていた窓がそこにはあった。相変わらず、仕事が早い。

 これまた難なく終わっていき、最後あたりでは、他のところで掃除が終わり、暇を持て余した人が加勢に来てくれたため、より加速した。

 箒で掃除し終わったら、とりあえず箒を壁に立てかけておいてから、机運びに混じった。最後の机が下の位置に戻され、それを確認したあと、僕は立てかけておいた箒をしまった。

 その後荷物を背負い、教室を出ると、吉田さんとその他数名が固まって帰っている後ろ姿があった。

 話は邪魔しない方がいいし...どうしようか思案しているうちに、吉田さんは校舎を出ていった。

 しょうがない、明日こそは、と僕は決意した。

 

その時肩を叩かれた。反射的に振り向くと。

「ドンマイ。明日こそ頑張れよ。応援はしてる」

某友達がいた。面白そうに、マスクの上からでも、口角が上がっているのが確認できた。

 僕は一言言い返してやる。

「うるせーーー!」

 明日こそ、吉田さんが一人で、かつ、話しかけやすいチャンスが有りますように。

  

(作者注:そんな都合の良いチャンスは来ません。滅多に、ほぼ間違いなく)

 

 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の青春? @harusuisei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ