第4話「味噌汁、そして爆発」

『ゴソゴソ』あるいは『ゴシゴシ』という音だけが鳴っていた。

 女は状況が理解出来ず、現実逃避をするようにバスタオルで味噌汁を拭いていた。

 台所から遠く離れた玄関、扉を挟んだ寝室、バスルーム、トイレに至るまで、部屋中に味噌汁が飛び散っていた。

 しかし、味噌汁の近くにいたはずの女は一切の味噌汁を被っていなかった。


「なんでだよ…なんでだよ…せっかく田舎のお袋から届いたジャガイモをいれたのになんで今日に限って………」


 味噌汁を拭き取りながら女は呟いた。

 いつもなら豆腐とワカメのみの具材で、出汁は市販のものしか使っていなかった。

 しかし、この日、女となる前の男は前日の夜に届いた実家で取れたジャガイモを追加した味噌汁を作ろうとした。

「どうせ作るなら」という気持ちから早起きをして出汁を取った。

 出汁を取った後でゆっくりと丁寧にジャガイモに火を通し、仕上げとして豆腐とワカメを投入した直後だった。

 それは、確かに『ボンッ』という音と共に爆発した。

 味噌汁爆発!!!!!

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