その後 2
どうしたものかなぁ、振り返れば余の母親がいるというのに体が上手く動かない。
なぜだろうな、自分の正体をあれほど知りたがっていたのにこのザマかよ。
情けねぇな。
父親に会った時とは事情が違うからな、あの時はもう死んだと思って父親とかどうでも良かったからな。
「あの〜聞こえてますか?」
「あ、はい」
咄嗟に出た言葉だから思わず敬語を使ってしまった。
今までの余ではあり得ない事だから自分でも驚いている。
「何か私に用があるんですか?」
相当怯えているようで声が震えている。
そらそうだような、あっちからしたら知らない奴が家の前で立っているのだから。
「あ、ある!用ある!ます…」
今の余に足りないのは勇気だけだ。
何を今更ビビっているのだ?余は王になる男だぞ。
「な、なんですか?」
はぁ〜…ふぅ〜。
余は恐る恐る振り返る。
……あれだな、余は父親似なのだな。
余とは似ていないのだな、なぜあんな奴に惚れてしまったのだろうな。
「…っ!もう用が無いならそこ退いてください」
余の顔を見た瞬間余の母親であろう人はすぐに余から顔を逸らし、家に入って行こうとする。
余と父親があまりに似ているからビックリしたのだろうか。
「ちょっと待て!…ください」
家に入って行こうとした母親であろう人の肩を掴む。
「何ですか!警察呼びますよ!」
「それはちょっと困る。…ます」
警察を呼ばれてしまったら面倒くさいし、両親を呼べってなると本当にややこしくなる。
警察の奴に親に連絡するって言われたらあの人が余の親なんだって言えば良いのか?
…ダメだな。
「とりあえず話だけ聞いてください」
とりあえず誤解を解かないと話が始まらない。
嫌だがここは敬語を使って誠意を見せないとな。
「……話だけですよ」
良かった、一旦話は聞いてくれるらしい。
もう回りくどい事はしない、ただただ事実を伝える。
「あの、余…、僕はルーロの子供です」
…何だその言い方は、もっとマシな言い方あっただろ。
「ルーロ…、どこでその名前を」
息子にも反応して欲しかったな。
「聞いたというか、会った」
「どこでその名前を聞いたのか知らないけどもうやめてください!あの人はもう死んだんです!」
再び家の方へ帰って行こうとしたのでもう一度止める。
「あいつは死んだけど余はその息子なんだよ!」
「もうやめて!」
確か母親に会った時に使えっていうルーロに教わった魔法があったな。
これなるべく使いたく無かったのだがな。
魔法が愛みたいな変な事を言っていたから嫌なんだよなぁ。
だが、ここで使わなかったら警察を呼ばれてしまうから使うしかないな。
余は青い炎を出し、母親であろう人を包み込む。
もうこれで信じてくれなかったらもうお手上げだ。
「……っ!」
気づいたようだな。
「生きてくれてたんだ…」
「たまたま生きてた」
「ありがとう…」
そう言って余に抱きつく。
まぁ別に余が会いたかった訳では無くて父親が言ったから来ただけだからそんな感謝されてしまったら困るな。
それにただただ生きてただけなのに褒められるのもなんだかむず痒いな。
「…別に」
そう一言だけ返した。
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