2年生編 第52話

 やはりまだ皆はザワザワしている。


 当然だ、なんせシャンデリアが落ちてきたからな。


 こんな状態では演劇を続けることが出来ないからさっさと終わらせるためにガラスの靴のところを省いてプロポーズまで持っていったのだ。


 この余の天才的なアドリブのおかげでなんとか終わらせることが出来たのだ。


 やはり余は演技も出来るのだな、もうここまで来たら怖いまである。


「あんた大丈夫なの?」


 7回ビンタ女が駆け足で余に近づいてくる。


 大丈夫なの?だと?余を何だと思っているのだ、あんなシャンデリア如きで余に傷がつくわけがないだろ。


「大丈夫に決まっているだろう。余は強いのだぞ」


「本当に?強がりじゃなくて?」


「強がりではない。強いのだ」


「…ごめんなさい。私が宇野を王子様役にしたから」


 何だよ、こいつらしくない。


「謝ることなんか何もない。余だったから無事だったのだ。落ち込むな、自分を誇れ」


 そうなんだよ、これで王子様役が余以外だったら確実に死人が出ていたからな。


 余も良かったよ、死人が出なくて。


「…ありがとう」


「気にするな」


 余は7回ビンタ女の肩をポンっと叩いて、この場から離れた。




 まぁ何はともあれ無事にクラス劇が終わって余は満足だ。


「う、宇野さん!」


「うぉ!」


 余の視界の外から急にクソ陰キャが飛び出てきた。


「うへ、うへへへ」


「…?」


「えへ、えへへへ」


「……?」


「へへ、へへへ」


「………?」


 な、何なのだ、こいつは。


「私も宇野さんの側にいたいです」


「うお!」


 クソ陰キャは余の腕に飛びつく。


「えへへへ」


「何をやっている。離れろ」


「ん〜?何でそんなこと言うんですか?」


「何でもクソもあるか、くっついて良いわけがないだろ」


「ん〜、別に良いじゃないですか」


 さっきから余の腕に顔を埋めているが、こいつは一体何をやっているのだ?


「待って!宇野くんこれはどういうことなの?」


 桜井莉緒がどこからか現れてきた。


「どういうことも何も」


「何で宇野くんの腕に柊野さんが引っ付いているの!」


「余もなぜかは分からない。離そうにも、ほら」


 余は腕をブンブンと振ってみせた。


 振り払おうとしても中々振り払えない。


「な、余は悪くないだろ?」


「そんなの許せない。柊野さんも離れなさい!」


「ん〜」


「頼むからここで喧嘩しないでくれ…」


「宇野!あれって…どういう状況?」


「余に聞かないでくれ」


「宇野さん!最後の…どういう状況ですか?」


「だから余に聞かないでくれ」


「2人も手伝って!」


「分かった」


「分かりました」


 この引っ張り合いにあの2人も参戦する。


「ぷぷっ、助けてあげようか?」


 この状況を楽しそうに金髪が見ている。


 本当に腹の立つ奴だ、顔を見ているだけでしばきたくなる。




 なぜこうなってしまうのだ。

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