第101話

 もう二日目の午前と言うべきか、まだ二日目の午前と言うべきかは今の余には判断できないが、ここを乗り切ればあとは演劇を観るだけだからなんとか乗り切りたいと思う。


 さて、今は九重菫と並んで歩いていのだが、昨日の高宮千沙の時よりうるさい。


 いや、なぜ余がこんな誰かと一緒にいたらこんなにも騒がれるのだ?


 どれだけ暇なのだあいつらは。


 もしかしたら余と言うより九重菫の人気でこんなにも騒がれたのかもしれない。


 九重菫って学校中に知れ渡っているのか?すごいな。


 九重菫は九重菫でなぜか堂々と歩いているのが意味がわからない。


 前の高宮千沙だったらちゃんとつっこんでくれて楽だっただろうなぁと思ったのだが、今の高宮千沙は全然大人しくなって余が疲れる羽目になってしまった。


 まぁ高宮千沙はまだ良いのだ、九重菫はずっと嬉しそうなのだ、だから誰もやめようとしない。


 だから周りの奴らも騒ぎ立てるのだ。

 

「なぁ今からどこに行くのだ?」


「着いてからのお楽しみです♪」


 何がお楽しみ♪だ!余が楽しみにしているとでも思っているのか?


 そんなことを思っていると考えるだけで嫌で仕方ない。


 頼むからさっさと着いてくれよ、このままだと余の体力がもたない。


「楽しそうだな」


 あまりにも良い笑顔だから思わず聞いてしまった。


「はい、とても楽しいです。今日は宇野さんと文化祭を回りますし、午後からは鈴木先生が演劇をするんですよ、楽しいですし、楽しみです」


 そういえばこいつはあの担任に憧れていたな、午後から演劇を観ようと言ったのも九重菫だったなぁ。


 あの仕事を余に押し付ける奴のどこを憧れているのだ。


「はい、着きましたよ」


 そんなこんなで九重菫が来たかったと言っていた場所に着いたらしい。


「ここはどこなのだ?」


「はい。ここは映えスポットです」


「ばえスポット?」


 ばえスポット?聞いたことの無い言葉だ、ハエが飛んでいるスポットなのか?なぜそんな所に来たかったのだ。


「え!知らないんですか?写真映えする所ってことです」


「いや、知っていたぞ」


 写真映え?だから映えスポットと言うのか。


 あ〜だから教室の中がすごい飾り付けがあるのか。


「じゃあ早速撮っていきましょう!」


「はいはい」


 それにしてもすごいテンションだな、その元気はどこから出ているのだ。


 九重菫は黒板に描かれた羽に体を合わせて立っていた。


「宇野さん、撮ってください」


「はいはい」


「位置合ってますか?」


「ちょい左」


 それにしもこの羽誰が描いたのだ?綺麗に描いたなぁ。

 

「綺麗に撮れましたか?」


「ほら」


「ありがとうございます。宇野さんは撮りますか?」


「いや、余はやめておく」


「じゃあ、あっちで二人で撮りましょう」


「いや、お前だけで撮れよ」


「宇野さんと撮りたいからここに来たんですよ」


 なんだと…、余はただの写真撮るだけの役目だと思っていたのだがな。


「はぁ〜、さっさと撮るぞ」


 もう対抗するのは無駄だから諦めた。


 余の考え方が変わってきた。


「じゃあ、あれで撮りましょう」


 花紙で作ったハートの形があった。


 そのハートの中に余と九重菫が並んで撮る言っているらしい。


「で、これは誰が撮るのだ?」


「そうですね…あ、あの撮ってもらえますか?」


 そこにいた適当な奴に撮ってもらうことになった。


「ほら、宇野さんもポーズとってください」


「お、おお」



「はい、チーズ」


 

 余にポーズはないから適当に九重菫の真似をする。


 別にポーズなど必要ないだろ。


「ありがとうございます」


「別に良いですよ」


「わ〜綺麗撮れてる♪これホーム画面にしますね」


「勝手にしろ」


 まぁ写真を撮るだけだったら楽だから三人の中では一番マシなのかもしれない。


「あと4か所ありますからがんばっていきましょう!」


「まだあるのかよ!」

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