第58話
なぜ余はこいつらを助けるような行動をしているのだ?
余は魔法少女を倒して地球を征服するのが目標なのだ。
なのになぜ余は当然の如く魔法少女の助けをしているのだ。
あまりにも寝ていな過ぎて頭で何も考えていなかった。
これまで余が間抜けだったとは、自分で自分が情けない。
今なら間に合う、引き返そう。
余は悪くない、元々余は敵だからな、あいつらが弱いのが悪いのだ。
あー本当に余は何をやっているのだ。
***
「ねぇ、宇野くんの調子悪くない?」
「悪いですね」
過去2回宇野くんが怪人と戦っていたのを見ていたのですが、明らかに動きが違います。
「どうしたの?あいつ」
「多分ですが、寝不足なんだと思います」
「寝不足?」
「昨日の放課後から今日の朝まで宇野さんは一睡もしていなかったんです」
「どうして?」
「一回私たちが作ったものをぐちゃぐちゃにされたのを私が不安で帰れなかった時に宇野さんが残って見張っていたんです」
「え、あの宇野が?」
「宇野くんが?」
二人は信じられないことを聞いてしまった、みたいなリアクションをとりました。
「それにその前の日には衣装も作っていますから最悪二徹の可能性もあります」
「二徹であの動きなんだ」
宇野さんにとっては調子悪いのかもしれませんが、私たちにとってはとんでもない動きに見えます。
「そんなことより、このままだったら宇野がボロボロになっちゃうよ」
「宇野くんがこれ以上怪我を負ったら私たちだけで何とかするよ」
「そうだね」
元々は私たちがどうにかしないといけないのに宇野さんに頼ってしまっています。
だけど私たちは薄々感じています、この怪人は私たちでは倒すことが出来ない、と。
合体技が出ない限りは私たちに勝ち目は万に一つもありません。
だから、宇野さんが何とか怪人から鈴木先生を救い出してくださったら私たちに勝機が見えてきます。
「皆さん申し訳ありませんけど、私たちではあの怪人には勝てません。だから宇野さんに頼ることにしましょう」
自分で自分の放った言葉が情けないことはしっかりと自覚はしています。
だけどこれはもう私たちだけの問題だけではなくて、地球がかかっていますから。
「でもどうするの?」
「私に考えがあります」
***
あーはいはい、やめやめ。
なぜ余があのデカブツと戦って傷を負わなくてはならないのだ。
あほらし、帰ろ。
「頑張ってください宇野さん」
は?何を応援をしているのだ?
どれだけ応援されようが余はお前らの敵だからな、助ける義理がない。
「宇野くんって本当にセンスの塊だよね。いや、センスの塊って言うよりセンスの擬人化だよね」
え?
「宇野ってセンスもあるし、才能もあるし、天才だし、ダメところを探すのが難しい」
そうであろう、そうであろう。
余はなぁ凄いのだ。
「私が頼りないせいでまた宇野さんがクラス委員に戻ってきてもらって、私には無いカリスマ性でクラスのみんなをまとめていて、まさしくクラスの王でした」
バカバカ言い過ぎだ。
だがまぁ、全部事実だがな。
ようやくこいつらも気づいてしまったのか、余が完璧な存在であることを。
「おい、お前ら。10秒以内にあのデカブツからあの教師を出してやるからな」
「よっ、センスの擬人化」
「とか言って10秒もかからないんでしょ」
「さすがです。クラスの王様」
ふふふ、今の余は誰にも負けないぞ。
ドンッ
今までとは比べものにならないスピードでデカブツに突進していく。
遅い。
さっきまで弾き飛ばされていたが今の余ではそんなもの当たるはずもなく、そのままあの教師のいるところに突っ込んでいく。
デカブツの中はいつも通りスライム状になっていて気持ちが悪い。
あといつも通りあの教師の過去が頭の中に流れ込んでくる。
本当にそれやめてくれないか?
あと、また余はあいつらに騙されたのか?
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異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました
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