第55話

 あ、いつの間にか家に着いていた。


 あまりにも眠た過ぎる。


 寝ないってこんなにも辛いとは思わなかった。


 学校に行くまでの時間はまだあるが、ここで少しだけ寝るということは今の余には出来ない。


 多分ここで目を閉じてしまったら次に目を開ける時は次の朝になってしまう。


 余にはまだ仕事が残っているからな、こんなところで寝ていられない。


 余がここで寝てしまったらあいつらは余がいなくてクラス劇どころじゃなくなるからな。


 きっと余を血眼になって探しに来るだろう。

 

 安心しろ、余は王だからしっかり下の奴の面倒を見なくてはならないからな。


 本当に世話の焼ける奴らだよ、余がいなかったら何も出来ないからな。


 というか、結局はあの夜に誰も来なかったな。


 来たらボコボコにして家に帰って寝ることが出来なのだがな。


 なぜ来なかったのだ、おかげで余が寝ることが出来なかったではないか。


 分からない奴に腹を立てても仕方ないか。


 さて、冷たいシャワーを浴びて目を無理やり覚すか。


 正直なところもう余は限界だ、今にも寝てしまいそうだ。


 冷たいシャワーを浴びようが眠たいものは眠たい。


 何を言っているのだ余は、眠た過ぎて頭も回らない。

 

 ああ、ダメだ。


 家にいたら落ち着いて寝てしまいそうになる。


 とりあえず動こう、動いていたら寝ることはないだろう。


 なぜ余は家の中をぐるぐると歩き回っているのだ。


 家の中を歩き回っても仕方ない、学校に行くとするか。


 一歩一歩フラフラしながら歩みを進め、過去最長の時間で学校に着いた。


 あれ?早めに家を出たはずなのだが時間ギリギリになってしまっている。


 どれだけ歩くのが遅かったのだ。


 教室には誰もいなく、体育館で準備を進めていた。

 

 教室には行かなかったら良かった、あと体育館で準備をしていることを余に伝えろよ、たまたま気づいたから良かったが。


「宇野くんどこ行ってたの?」


 桜井莉緒がまだ準備が残っているというのに、余に駆け寄って来た。


「色々あったんだよ」


「色々って…」


 桜井莉緒は呆れた表情をする。


「宇野くん顔色悪いよ、体調悪いの?」


「余は体調を崩したことがない」


「心配だなぁ」


「それより準備はいいのか?」


「あ、そうだった。じゃあ、またね」


 正直今の会話で何を話したかもう覚えてないし、何も考えずに発言をしてしまっている。


 このクラス劇が終わったら他の奴らの劇を見ずに余は寝るとしよう。


「そこで何してんの?」


「お前こそ」


 桜井莉緒に続いて今度は高宮千沙が余のところへやってきた。


「私は準備担当じゃないから」


「そういえばお前は劇に出るのだったな」


「そう」


「ちゃんとセリフは覚えたのか?」


「覚えたに決まってるじゃん」


「そうか、ちゃんと観ておいてやるから頑張れよ」


「え、うん」


 高宮千沙は俯きながら余から離れて行った。


 話す元気もないから、もう会話もしんどくなってきた。


「じゃあ皆さん。最高の劇にしましょう」


「「「おーーー」」」


 九重菫の合図で皆が気合を入れる。


 余がやりたかったなぁ。


 ***


 余のクラスの劇は見事成功に終わった。


 まぁ、成功してもらわないと困るがな。


 特に九重菫の演技は皆を魅了していたな、余から言わせてみればまだまだだがな。


 さてと、やっと寝ることが出来るぞ。


 もう余は2日寝ていないのだ、そして自分たちのクラスが終わったから解放感で一気に睡魔が襲ってきた。


 横になれる場所を探して、余は横になって目を閉じた。


 

 ピリッ

 

 本来感じるはずのないマナを近くで感じ取った。


 余以外ということは……



 デスゴーンか。











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 異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました

という作品も書いているのでぜひ見てください。

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