第54話
なーんでこんなことになってしまったのだ。
勢いだけで言ってしまったことを後悔している。
なぜ余は学習が出来ないのだ、もうこれで3回目だぞ。
台本脚本を書いた時と衣装作った時は良かったよ、でも今回は徹夜明けからの徹夜だ、訳が違う。
え、本当に余はこれから朝まで寝ずにいるのか?
帰りたい、今すぐにでも帰って寝たい。
だがもう帰ることは出来なくなってしまったんだよなぁ。
ここで帰ってしまってもし、余ではない誰かがあの時のようになってしまったら、まず余が疑われてしまう。
そうなってしまったら王としての威厳がなくなってしまう。
また余は王をクビになってしまう。
せっかく上り詰めた地位だというのにこんなことでまた王を剥奪されるのは納得がいかない。
だったら頑張るしかないよな。
あーもうすっかり空が暗くなってきたなぁ。
寝ながら透明化したいが、寝てしまったら透明化が解けしまう。
透明化は結構簡単に出来てしまうが寝てしまったり、気絶したりすると解けてしまうのだ。
だから今回は分身も使うことが出来ない、余が寝てしまったら分身は消えてしまうのだ。
あいつ余の分身のはずなのに優秀だから任せたかったなぁ。
今回は余一人の力でなんとかするしかない。
なんとかって言うか、ただ寝ないだけなんだがな。
寝ないだけっていうのがキツいんだよ、台本脚本を書いた時と衣装を作った時は作業に熱中していたから耐えれたが、今回はただただ寝ないだけの時間を過ごすという地獄なのだ。
何か一人で出来ることはあるのだろうか、しりとりとか?じゃんけんとか?鏡であっち向いてホイとか?
全部やったが全く面白くなかった、しりとりはちょっと面白かった。
お化けで良いから出てきてほしいものだ、今なら仲良くしてやっても良いぞ。
だがお化けから勝負を仕掛けてきたら余は容赦なく倒してやるからな。
こんな調子で本当に朝まで余は起きていられるのか?
***
ガラガラッ
「え、宇野さん?」
「ああ、来たか。それにしても早いな、ちゃんと寝たのか?」
まだ時計の短針は5を指している。
「はい。ちゃんと寝ましたけど」
羨ましい。
「じゃあ余は一旦帰るとするか」
「え、ちょっと待ってください」
「なんだよ」
「あの時から一度も家に帰っていないんですか?」
「そうだ。だから一旦家に帰るのだ」
シャワーとか着替えをしたいからな、だから一旦家に帰らなくてはならない。
今から家に帰ってもまだクラス劇には間に合うだろう。
おっと、立ち上がろうとしたら上手く立てずによろめいてしまった。
たかが二徹くらいでよろめいてしまっていたらまだまだ鍛え足りないな。
「大丈夫ですか?!」
「お前の方こそセリフちゃんと覚えたのだろうな?」
「もちろんです。えーっと…ほら」
九重菫はカバンをガサゴソと探り、ボロボロになった台本を取り出し、余に見せてきた。
台本を余に見せてどうしろというのだ。
「ちゃんと栞も挟んでありますし」
台本に栞って珍しくないか?
台本って折り目をつけるだけだと思っていたがな。
「じゃあ今日は大丈夫そうだな」
余はフラフラな足取りで教室を出る。
もう二度とこのような過ちを起こさないようにするぞ。
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異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました
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