第12話

 よし、昨日決めた案を今日から実行に移していくとしよう。


 とりあえず桜井莉緒の父親が再婚をしないように、何か恋愛に発展しそうなことが起これば阻止しなければならない。


 だから桜井莉緒の父親を24時間監視する必要がある。


 だけど余は学校があるから24時間も監視なんかできるはずがない。しかし、余は魔法が使えるのだ。余の分身が桜井莉緒の父親を24時間監視を続けて動きがあれば余が実際に現場に行って対処する。


 これで桜井莉緒は永遠に魔法が使えず、いずれ余が勝って地球の王になるのだ。


 少し集中して余の分身を作り出した。


「では、お前は桜井莉緒の父親をずっと監視しておくんだぞ。絶対に見つかるなるなよ」


 余がそう言うと分身は返事はせず頷いた。


 * * *


 数日経ったが動きが全くない。


 桜井莉緒の父親は普通に仕事して普通に家まで直帰して普通に過ごしている。


 桜井莉緒の父親は本当に再婚する感じの動きを見せない。


 だが、桜井莉緒の方はまだ魔法が使えずにいるらしい。余がいないと思っていつもの体育館の裏で話し合っているから分かった。


 これからも桜井莉緒の父親が再婚しないように監視が必要だな。


 あれ?違うよな魔法少女を倒すのが目的だよな。何で桜井莉緒の父親が再婚しないようにしているんだ?


 桜井莉緒の父親が再婚しないようにするのは過程であって最終目的は魔法少女を倒すことだ。


 危ない危ない、本来の目的を見失うところだった。


「はーい、みんな座って。ホームルーム始まるよ」


 ガララッとドアを開けて担任が入ってきた。


 はぁ〜、今日も憂鬱な時間が始まる。


* * *


「はい、ここ重要だからね。」


 世界史の授業をやっているのだが、つまらん。どうせあともう少しで余が地球を征服するのだから世界史の意味などない。


 今の時間はちょうど12時になった。終わるまでにはまだ時間がある。


 こんな授業を受けていても仕方ない。ちょうど12時ということは一般の会社は昼休憩に入る時間だ。


 だから、桜井莉緒の父親がもしかしたら動きを見せるかもしれないから余の分身と視覚を共有して、桜井莉緒の父親を監視することにするとしよう。


 片手で自分の目を隠して分身の方が見えている景色を見る。


 桜井莉緒の父親が自分のデスクから立ち、移動をしようとしていた。


 ちなみに余の分身はここの会社の清掃員の格好になって潜入している。


 魔法を使えれば簡単に会社に入れるし、服装だって変えることもできる。だから、潜入に成功しているのだ。


 これならばバレる心配は一切ない。だから安心して余の分身を単独で動かせることができるのだ。


 桜井莉緒の父親は身支度をして外へと向かう。


 昼ご飯でも食べに行くのか?

 

 余の分身を桜井莉緒の父親の背後に尾行させて動きを探る。


「…………ぅん」


 ん?どこからか声が聞こえてくる。


「………くん」


 どこからだ?


「宇野くん、起きて」


 宇野くん?余のことか?


「宇野くん、先生めっちゃ睨んでるよ」


 ああ、分身の方に気を使いすぎて実物の方を気を緩めすぎた。


 世界史の先生が余のことを睨んできている。


 余は椅子から立ち上がる。


「悪い、寝てた」


 素直に謝る余は素晴らしい王になれると思う。もちろん頭は下げないがな。


「いや、なんでそんな偉そうなの?」


「偉いからな」


「あなたは偉くないからね、立場上私が教師であなたは生徒なの。だから私の方が上なの」


 こいつが言っていることもあながち間違いではない、教える者と教えを請う者だから、それは教える者の方が上なのは間違ってはいない。

 

 だが、


「余はこのクラスの王だ」


「委員長なだけでしょ」


「だから王だ」


 誇らしいことだから胸を張る。

 

「ちょっと周りを見てみなさいよ」


 ん?周りか?


 周りを見渡すと笑っている奴もいれば、引いている奴もいる。


 ん?どうしてだ?余が王なのだからお前らも誇らしいだろう?


「もういいわ、座りなさい。次はちゃんと聞いててね」


「ああ」


 余は返事をして椅子に座る。


 さて、もう一度桜井莉緒の父親の監視を再開しよう。


「ねぇ」


 隣の桜井莉緒に肩をツンツンと突かれ桜井莉緒の方へ向く。


「なんだ」


「その王ってやつ辞めたら?」


「なぜだ?」


「みんなと馴染めなくなるよ」


「そんなもの不要だ」


 王とは孤高で1番上に立つ者、よってクラスのみんなと馴染む必要もない。


「それだと寂しいよ?」


「そんなこと余が寂しがる訳がない」


「宇野くんは優しいんだからもったいないよ」


「だから余は優しくない」


 こいつはなんで余を優しいようにしたいんだ。


「あと、余の心配をしている暇はあるのか」


「え?」


 おっとこれは言い過ぎたか?


 これ以上言ったら余が桜井莉緒が魔法少女だと知ってるいることに気づかれてしまう。


 だが、余はこいつと父親の問題のことを知っているから言い訳はできる。


 余はこいつと話している暇などない。桜井莉緒の父親の監視をしなくてはならない。


 さてと、動きはあるか?


 余はもう一度片手で目を隠して分身の方の景色を見る。

 

 分身はしっかり桜井莉緒の父親を追っていてくれたようだ。


 すると桜井莉緒の父親は誰かと話していた。


 誰と話しているのだ?


 次の瞬間、桜井莉緒の父親は大きなスライム状の何かに取り憑かれてしまった。

 

 ということはさっき桜井莉緒の父親と話していたあいつはデスゴーンだったのか。


 だが、もうすでにデスゴーンの行方は分からなくなっていた。


「先生、私保健室行ってきます」

 

「大丈夫なの?」


 隣の席の桜井がガタッと急いで席を立ち、教室を出て行く。


 ということは気づいたのだろうな。


 だが、怪人化したのが父親ということには気づいてないだろうな。


「先生、私も」


 次はレッドの魔法少女の高宮千沙が席を立ち、教室を出て行く。

 

「高宮さんも?」


「先生、私は2人のことが心配なので連れ添いで行きます」


 次はブルーの魔法少女の九重菫が席を立ち、教室を出て行く。


「九重さんまで?」


 これは普通の戦いではないぞ、桜井莉緒は怪人化したのが自分の父親だと知ったらきっと戦えなくなる。


 つまり、この戦いで魔法少女たちは負ける。


 それはちゃんとこの目で見なくてはならない。


 余は席を立ち、魔法少女たちに続く。


「すまん、散歩してくる」


「いや、君はダメだよ」

 








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました

という作品も書いているのでぜひ見てください。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る