第24話 リーダー須賀彗夏のプレッシャー(前編)

 俺、シローさん、二夜、プリフォーの4人、計7名がダンススタジオに来ている。




 「それでは彗夏、伊莉愛、君たちのダンスを見せてもらおうか」




 二人がデビュー曲の自分のダンスパートを踊る、シローさんは鋭い目つきで見ている。




 「よし、二人のレベルは大体わかった、次は臣と心も一緒になって歌ってみてくれ」




 その後は数回頭から最後まで通してやってみた、ボーカル組の臣と心は簡単な振り付け程度なので駄目だしされることはなく今後は歌のレッスンを重点的にするようにと伝えられる、ただしダンス組の二人は細かいチェックが入って厳しい目で見られる、シローさんが元トップダンサーという事もあって踊りには妥協しない所があるのだろう。




 結構厳しくきつい言葉をかけているので彗夏と伊莉愛も参っているかと顔を覗くが二人とも嬉しそうな顔をしている、元々ダンスの指導をしてもらいたくて事務所に入ったわけだから当然と言えば当然か、自分たちが憧れたダンサーに見てもらえているのもあるのだろうな。




 今後メインで歌う臣、心の二人はボイストレーニングの先生の元でレッスンを受けることになった、シローさんと二夜が日本を離れる前日に再度四人でのセッションをする、約2週間、彗夏、伊莉愛はシローさんにダンスレッスンをしてもらうことになった。




 幸い今は夏休みなので朝から晩までレッスンが出来る、9時に事務所に集まり臣、心はボーカル、彗夏、伊莉愛はダンスと二手に分かれてレッスンを受けている、各レッスン場所が事務所からそれぞれ30分程度だが反対側にあるので行き来するのは結構大変だ、俺は毎日二つの場所に顔を出している、ボイストレーニングの講師は社長の知り合いで声楽の先生でもある、女性で40代半ば体系はふくよかでパワフルな声を出される、現役は退いたそうだが今でもステージで通用する声だ、臣と心はここでレッスンを受けている。




 「それでは先生、臣と心をよろしくお願いします」




 そう言って俺は二人を残してダンス組へ顔を出す。






 「手足が上がってない、もっと早く! 動きが遅いぞ!」




 レッスン所に入るとシローさんの声が響く、今日はまた偉く厳しい指導しているな、何かあったのかと思い朝から見学していた二夜に聞いてみた、二夜は会釈をしてから、




 「先ほど彗夏さんと伊莉愛さんがキャッスルズのダンスをパパに披露したんです、それを見てとても嬉しそうにしていました・・ですが・・・・」




 あ~、以前公園で社長に披露したダンスだろうなと思った。




 「それからやけに彗夏さんに対して厳しく指導しているように感じます」




 ん~、社長も厳しい目で見ていたもんな、でも今踊っているのはデビュー曲のやつだし、完成度が上がればいい事だと思う。




 「伊莉愛は休憩していい、彗夏はまだだ、もう一本行くぞ!」




 「はい!」




 張り切っているな、いい事だ、そう思っていたが横にいる美少女の横顔が不安そうに見えたのが気にかかった。







 シローさんが来て一週間が経った、皆毎日レッスンをこなし着々と実力を付けている。




 「彗夏! 起きろ! 手の動きが甘い、もっと大きく回せ!」




 「はい、ありがとうございます!」




 シローさんの彗夏に対する当たり方が日に日にエスカレートしているように感じる、それは二夜と伊莉愛も同じ考えのようだ。






 思うこともあり昨日社長に相談したのだが・・・・。




 「シローが彗夏に対して厳しいか、それは自分と彗夏を重ねている所があるのかもな」




 「彗夏と重ねているとはどういうことですか?」




 「手前味噌だが私は天才だ、それに比べてシローは努力家だな、コンビで踊っていた時、私のダンスについていくのに必死であいつはいつもあがいていたよ、大会で二連覇した後ダンス以外に色んな事がしたいから辞めたのだがシローのやつは自分の力が足りないから私が辞めたんだと勘違いしている、足を引っ張ってすまないとな、何度も飽きたから辞めたと言ったんだけどな、身長は私の方がシローより10センチ高い、彗夏と伊莉愛の身長差も10センチ以上ある、背の高い方がダンスのセンス、実力が上なのを見て昔の自分を思い出し悔しがっているんじゃあないのかな、それで彗夏の実力を上げたくて厳しく指導をしているのだろう」






 「それにしたってあれは厳しすぎます、社長の方から何とか言ってやってくださいよ」






 「やつにダンスの指導を頼んだ際、私は一切口出ししないという約束だからな、私からは何も言うことは出来ないよ」





 静まりかえったダンススタジオ。




 立ち上がろうとした彗夏がふらつき倒れたので直ぐに駆け寄り声をかける、するとシローさんが声を張ってその程度で倒れてどうする、もう一本行くぞ! と強く言う。




 「休憩した方が良いな、シローさんには俺が言うから休んでいろ」




 息が上がりきつそうにしている彗夏に言うと、




 「何を言っているんですがマネージャー、やれる、やれますよ!」

 「何を言うの還流君、やれる、やれるよ!」




 一瞬幼馴染の水ノ森環みずのもりたまきのセリフがダブって聞こえた。

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