壊創

gino

第1話

 目が覚めたら知らない天井だった。

 胸糞悪い。

 湿りきった空気と汚れた壁がこの部屋を満たしている。

 ここはどこだ。

 とりあえず横になっていた台に腰掛ける。頭が重たい。頭に変なものがくっついている。ヘルメットだろうか、そこからコードが延びていて大きな機械につながれている。そして、変にもヘルメットから小さい音だが機械音がする。


 コードをひきちぎり投げ捨てる。相変わらず頭にはヘルメットがついている。金属製なのだろうか、とても重い。


 部屋の中は研究室らしき機械や道具が置かれていた。隅に鉄パイプがあったので手に取る。ずっしりとしていて重たい。

 これでどうにか…

 それを両手で持ち、先を地面に向けて構える。勢いよく頭めがけて振り上げる。


 ガキンッ


 大きな音がした。ヘルメットを触ってみると少し凹んでいる。それにしても頭がクラクラする。

 鈍ったのだろうか。それにしても取れない。硬い。

 もう一度構え、振り上げる。だがまだ取れない、もう一度…もう一度…もう…


 12回目にしてヘルメットはペシャンコになり、頭から血が垂れる。意識が朦朧とし、視界がはっきりしない。まるで頭を殴られたようだ、いや実際そうなんだが。早くここを出よう。


 すぐさまパイプを手に、ドアへと向かう。


「よく見えないな」


 まだ視界がグワングワンする。

 しばらくすると視界のピントが合ってくる。

 見てみると、ドアの横には0〜9の番号の書かれたボタンが設置されていた。

 スライド式のドアなのか、取っ手を横に引いてみる。


「開かない」


 鍵がかかっているのかしっかりとロックされている。

 どうしよっかなぁ。

 部屋を見回してみると、ガラクタの中に何かの紙が見える。


「なんだこれ」


『プリン教爆誕! 日本社会に大きな影響?』

『失踪者あとを絶たず、犯人は黒い服を着た男性?』

天隣国てんりんごくの子供たち失踪! 一夜にして管理者ともども13名行方不明』


「くだらねえ」


 新聞記事の見出しのようだ。年代は上から順に、2000年、1960年、2060年発行。

 そういえば、今は何年だ?


 雑誌をおき、また辺りを探す。何か使えそうなものは、っと。

 そういえば、ヘルメットがあったな。

 ペシャンコにつぶれたヘルメットに鉄パイプを差し込む。無理矢理だが綺麗にはまったらしく、先端につけられたヘルメット(鉄の塊)は、パイプを上下に振っても外れなかった。


「まぁ、これしかないよな」


 ドアに近づき、鉄パイプを構える。先端が重くなったパイプは、構えているだけでキツイ。先を天井に向け、下の端を両手で持ち、野球の要領で構える。

 そういや、なんで俺こんなこと知ってんだろ?

 疑問はとりあえず追いやり、全力でスイングする。


 ドーーンッ


 凄まじい音が部屋の中で響き渡る。ちょうど先端の部分がドアに直撃し、大きな凹みができる。


「このドア厚いな。今ので破れなかったのをみると30cmはある」


 もう一度構える。今度は大きく足を上げ、全力で振りかぶる。


 ドーーンッ


 さっきよりもさらに大きく響き、厚いドアが吹き飛ばされた。手に持っていたパイプは真ん中から真っ二つに折れ、先端はドアと一緒に飛んでいき、壁に激突した。部屋から出てみると通路になっていて、左右に一方通行で幅が5人分はある広い廊下になっている。病院のようにところどころにドアがあって、この部屋もその一つのようだ。


「んっ?なんだこれ?」


 自分のいた部屋のドアの壁に「壊」と大きく書かれている。

 そして、斜め向かいのドアの壁には「創」と、これもまた大きく書かれている。


「そういえば俺の名前ってなんだっけか?あぁもう色々わかんねえや」


 ウィーーン、


 突然斜め向かいにあるドアが開き、白髪の青年が出てきた。

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