第348話 お花見

 農業、酪農、畜産、漁業を整えた俺達。各季節にあった植生への移行や各種レジャー施設の建設も終えた。


 つまり、後は楽しむだけということだ。


 そこで俺達は春から順にその季節を堪能することにした。


 春といえばやはりお花見というイメージが強いのではないだろうか。


 ということでただ花見をするというのもなんなので、俺達は桜をたくさん植えた場所までピクニックしながら向かうことにした。


 今日は適度に暖かく、空も晴れているので絶好のピクニック日和。気候に関しては天空島の超古代遺跡の力を使って調整しているので、晴れているのは当然の結果だ。


「なんと美しい花畑なんだ……」


 カエデが桜の花がある場所の途中にある花畑に目を奪われている。


 その花は菜の花と牡丹。視界の左側には一面に広がる黄色の絨毯。右側には濃いめのピンクの牡丹が一面に広がっていた。


 快晴の太陽の光を花びらが反射して、確かにその花畑は目を奪われるほどに綺麗だった。


「おっ。ふきのとうもあるな」

「なにそれ?」


 二つの花畑に挟まれた道の花畑と道の間の雑草が生えてる部分に、たんぽぽやつくしに混じってふきのとうもポツポツと生えていた。


 バレッタ達の指揮の下、ゴーレムたちに作業させたんだが、ホント芸が細かい。


「これがふきのとうって言うんだけどさ。天ぷらや蕗みそにして食べると、その独特の苦味がなんとも言えない味わいになって美味いんだよ。ビールによく合うんだ」

「へぇ〜。まだ食べたことがないわ。ぜひ食べてみたいわね」


 俺がふきのとうをむしり取ってリンネの前に掲げて見せながら説明すると、彼女は美味くて酒に合うと聞いて俄然目を輝かせる。


「私も食べてみたいぞ主君」

「私も!!」

「あたしも!!」

「僕も!!」


 花畑に見入っていたカエデ達も、俺達が話している内容を聞いたらしく、アピールしてきた。


 キースは肉じゃないのでどうでもいいらしく、すんって感じの全く興味がなさそうな、というか全くない表情をしている。


「いや、食べてみたいなら食べればいいけど、子供にはちょっと早いかもな?それでも食べてみたいか?手を出した物はちゃんと全部食べてもらうぞ?」

「食べるぅ!!」

「私も!!」

「僕も!!」


 あの苦味は子供たちにとってあまりおいしいと思えないと思うけど、食べたいというのなら食べさせてみるしかないだろう。


 お残しは許しまへんでぇ!!だけどな。


「分かった分かった。花見の時に挙げてやるから。それまで我慢するように」

『はぁーい!!』


 俺が皆を落ち着かせて諭すように言うと、リンネとカエデも子供たちに混じって返事をした。


 桜が沢山植えられている場所は少し小高い丘になっていて、上から見下ろすと、桜が眼下一面に広がってそれもまた美しい。ここまで来るのに三十分ほど歩いたので運動としてはちょうどいいだろう。


 見上げても桜が見え、見下ろしても桜が見える。なんとも贅沢な景色を見ながらの花見だ。


「それじゃあ、この辺で花見をするぞ」

『はぁーい』


 俺の合図でブルーシートを敷いたり、調理台を用意したりして準備を進めていく。


「よーし、後は料理を作るだけだ」


 俺達は子供たちにもできる部分を手伝ってもらいながら、春野菜や春の魚介を使って、天ぷら、ちらし寿司、刺身、炊き込みご飯の稲荷、生春巻き、アスパラベーコン巻、から揚げ、フライドポテトなどを作った。


 これで準備完了だ。後は食べながら作る料理ばかりだからな。


「それじゃあ始めるか!!」

『おー!!』

「いただきます!!」

『いただきます!!』


 俺達はチラチラと舞う桜の花びらの中で花見を始める。


 皆は料理を食べ始めたが、俺はやることがあるので、それには混ざらずに、バーベキューセットを用意した。


 その網の上に、アサリやハマグリなどを載せて網焼きにする。あさりは単純に醤油、ハマグリは醤油バターでちょっとだけ味変。


「にゃーん(ご主人~、こっちのが食べたいよ~)」


 匂いに釣られてやってきたイナホが俺にせがむ。


「まだ焼けてないからもうちょっと待ってろ」

「にゃーん(わかったぁ)」


 俺が出来るまで待つように言うと、大人しくエジプト座りをして出来上がるのを待つイナホ。


 俺はその間に別の網で焼き鳥を焼く。


「おっちゃん、俺には焼き鳥くれ!!」


 鳥の方にはから揚げを頬張っているキースがやってきた。流石肉の申し子。


 今回肉類が少ないからな。こっちにやってきたんだろう。


「よーし、お前ら、たーんと食え!!」

「にゃーん!!(やったぁ!!)」

「うぉっしゃー!!」


 暫くして焼き上がったら、イナホには魚介を、キースには焼き鳥を差し出した。


 二人は受け取った途端にかぶりつき、凄い勢いで食べていく。


 こりゃあもっと焼かないとだめだな。


 そう思った俺は、後をゴーレムに託して皆に合流して料理と酒に舌鼓を打った。


 やはりこの島で取れた食材で作った数々の料理の美味さは、自分達で育てたこともあり一入ひとしおだった。


 料理の美味さに酒もどんどん進み、気づけばリンネが泥酔するほどに飲んで、帰り着いた後でサキュバスと化したリンネと励むことになったのは内緒である。

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