第329話 お似合いの結末
目の前の景色が再び見えるようになると、そこにはたった一つを除いて何も残っていなかった。
「うう……」
そのたった一つとはイッキーリの事だ。イッキーリは気を失っているが、奇跡的に生き延び、まっさらな大地の上で横たわっている。
それは恐らくバレッタ辺りが力を貸してくれたんだろうな。
ありがとう。
『いえいえ、お役に立てて光栄です』
心の中でお礼を言ったら、バレッタの声が声が聞こえた。内容から察するにやはりバレッタがやってくれたらしい。
死んでしまったとしても良かったかもしれないが、罪を償わせるには生きていてもらわないといけないからな。
城もなくなってしまったし。
それに肝心の遺跡の場所を聞かないといけない。
「それじゃあ、倒したし。分離するか。この場合はどうしたらいいんだ?」
『全員でセパレートと叫べば分離してそれぞれの機体に戻ります』
「分かった」
戦いが終わった俺達は後始末をするため、ロボットを分離してロボットを仕舞い、グオンクをアルクィナスへと送り届け、再び俺はここに戻ってきた。
「さて、こいつにはどんな罰がいいか?」
「やっぱりアレじゃない?」
「そうだな。アレだな」
俺の独り言に二人が反応する。
まぁ俺もそれがお似合いだと思っているが。
「それじゃあ、そうするか」
俺は満場一致で決まった罰を実行する。
「うぅ……」
数分後、どうやらお目覚めの時間のようだ。
「こ、こは、どこだ……?」
「よう。目が覚めたか?」
よろよろと体を起こして辺りを見回すイッキーリに俺が声を駆ける。
「お、お前たちは!?ぐっ」
はじけとぶような反応をしたイッキーリだったが、体に受けたダメージが大きく、動いた反動で体に痛みを引き起こした。
バレッタがどうにかしてくれたとはいえ、あの攻撃を喰らって無傷だったら困るよな。
「お前の負けだよ、イッキーリ。大人しく従ってもらおうか」
「ふん、誰が貴様たちに等従うか!!こうなれば自害してやる!!」
「おっと、それは駄目だ」
「な、なに!?」
俺が降伏を促すが、イッキーリはそれならばと自害しようとする。しかし、俺が言葉を放った瞬間、イッキーリは驚愕を浮かべた。
それはそうだろう、体が思った通りに動かないのだから。
「どうした?」
「余の体に何をした!!」
ニヤリと笑ってイッキーリに尋ねると、激昂して叫ぶ。
「それはおまえが良く分かっているだろ?」
「こ、これは隷属の首輪!?」
俺はイッキーリの首元を指さして見下ろせば、イッキーリは自分の首元を手で探りながら自分の首に着けられている物の正体に気が付き、驚愕の表情を浮かべた。
「そうだ。お前が工場で造らせてあちこちにばら撒いたくそったれな道具だ。どうだ?自分に嵌められる気分は?」
「ふはははっ。血迷ったか!!これは余には外すことができる!!…………むっ!?外せないだと!?一体どうなっている?」
ニヤニヤしながら問いかける俺に勝ち誇ったように高笑いをするイッキーリだったが、思った通りに行かずに首輪をどうにか外そうと必死になっている。
「お前はバカか?お前が造った道具をそのまま使う訳がないだろ。外せないように改造させたに決まってるだろうが」
「バ、バカな!?あれは遺跡でしか作れない魔道具だぞ!?お前のような冴えない中年が改造など出来るわけなかろう!!」
俺は無駄な努力をするイッキーリに呆れるように答える。しかし、イッキーリは俺の答えを否定した。
俺がさえない中年って言うのは余計だろ。
「実際外せないんだからどうでもいいだろ?まぁいい。さて、お前の罰はこれからは人の言いなりになってこの国を変える事だ。地上人が劣っているという思想をなくし、地上人も平等だという思想の元、国を作ってもらう」
どうにもできないということが分かったところで俺が考えたこいつの罰を告げる。
地上人を虐げようとしたこいつが、地上人の地位向上をするというのはなんとも皮肉の聞いた罰だろう。
「そんなこと出来るわけがなかろう!!羽の無い者達は私達よりも劣っているのだ!!そんな者達と私達が同党など言うことはあり得ない!!」
「実際俺達に負けてんじゃねぇか」
この期に及んでまだその思想に固執するのか。
全くどこまでも始末に負えない奴だ。
「何をバカなことを!?お前たちは羽があるではないか!!」
「それはな……こういうことだ」
「な、ち、地上人だと!?」
俺達の言葉に反論するイッキーリだったが、俺達が翼を消すと、わなわなと震えながらその正体に驚く。
「そ。お前はその劣っている地上人負けたんだよ」
「そんなバカな……」
俺達が地上人だと知ってガックリと肩を落とすイッキーリ。
「お前が地上人の差別を無くす国造りをするのは決定事項だ。今後地上人に対するマイナスな思考と言動、そして行動を禁止する。それから悪行も禁止だ。せいぜい清貧に暮らして、地上人と仲良くなれるような国づくりをするようにな」
「……」
俺が改めて命令を下したが、呆然としているイッキーリは何も言わない。
「返事は?」
「分かった……」
俺はへたり込んでいるイッキーリの前に座り込んでニッコリと笑みを浮かべて凄んで見せると、イッキーリは振り絞るように声を出した。
「まだ自分の立場が分かっていないようだな?」
「分かり……ました」
未だに自分が上位者か何かと勘違いしているイッキーリに自分の立場という者を教えてやる。
イッキーリは俺の言葉に悔しそうな表情をしながらゆっくりと頭を下げた。俺達は街に戻り新しい城を作り上げ、イッキーリに演説させること混乱を終息させた。
暫くの間は厳しい立場に立たされるだろうが、イッキーリがその役目から逃れることは出来ない。
イッキーリはそれをこれから嫌と言う程思い知ることになるだろう。
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