第328話 雷神

「ふははははっ。どうやらイクスヴェルトDXで決まったようだな」

「悔しい」

「くっ」

「畜生負けた……」


 じゃんけんを制したのは当然俺。合体ロボの名前はイクスヴェルトDXと決まった。


―シュンッ

―シュンッ

―シュンッ

―シュンッ

―シュンッ


『くそっくそっ!!なんでスーパーアルティメットグレイテストゴーレムの攻撃が消えるんだ!!』


 俺達が各々の操縦席に着いて外の様子を見ると、城ボットが俺達に向かって攻撃していたらしい。


 しかし、まだ完全に名乗りを上げたわけじゃないため、合体が終わった無いとみなされ、無効化シールドのような絶対防御が張られたままのようだ。


 合体中に攻撃されないというご都合主義を実現するために、無効化シールドを実装する辺り、前所有者は流石ロマンティストなだけはある。


「さて、そろそろ本格的に合体終了だ。イクスヴェルトデラァアアアアアアックス!!見参!!」


 俺達は脳内に流れ込んできた操作方法によってポーズを決めた。


『フュージョンモードへの移行完了。シールドを解除します』


 その段階でようやく合体が完了し、シールドが解除された。


『はぁ……はぁ……おのれ!!ゆるさんぞ!!ここは私が王なのだ!!どこからやってきたかもわからぬ馬の骨などに奪われてたまるか!!喰らえ!!アルティメットキャノンバズーカ!!』

「なんだ、あれ!!かっけぇえええええ!!」

「確かにあれはロマンがあるな!!」


 城ボットの胸が開き、イッキーリが奥の手らしき武器がせり出してくる。よく戦隊ものの全員の武器が合体してできるキャノン砲みたいな形をしていてせり出てきた部分の横に引き金があり、それを引くことで発射できるらしい。


「はぁ……これだから男は……」

「敵のゴーレムに興奮するなんて……」


 リンネ達は俺達を呆れたような目で見つめていた。


「っとこうしちゃいられない。こっちも武器を出さねばなるまいて!!こい!!イクスヴェルトデラックストールハンマー!!」


―バチバチバチッ


 空中に亀裂が入り、そこから稲光を走らせて一本の黄金に光る巨大なハンマーがゆっくりと降りてくる。


 イクスヴェルトの正面で止まったそれを俺は握って肩に担ぐように構えた。


 これは決してゴルディオンなハンマーではない。断じて違うので諸君は気にしてはいけないよ。


『ふっふっふっ。あーはっはっはっはっ!!アルティメットキャノンバズーカを見たからにはお前たちに未来はない!!』

「御託はいいからさっさと打ってみろよ!!」


 勝ち誇るように大笑いして俺達見下すイッキーリを煽る俺。


 この勇者王もビックリな神のハンマーに砕けぬものはなし!!


『よかろう!!アルティメットキャノンバズーカを受けようなどと馬鹿な真似を考えたことを悔やむがいい!!チャージ!!』


―ヴンヴンヴンヴンヴンヴンヴンヴン……


 イッキーリが一度引き金を引いたら、徐々にキャノンの先にエネルギーが溜まっていく。


 しかし、数秒、数十秒、一分。待てども待てども発射されて来ない。


『遅い!!』

『ぐはぁ!?』


 俺達は余りに遅い攻撃に城ボットごとイッキーリをツッコミがてらぶん殴ったら、思いきり吹っ飛んでいく。


『くっ。くそ!!人が攻撃する前に攻撃してくるとは卑怯な!!』


 イッキーリが倒れた城ボットの体を起こしながらこっちを見る。多分睨んでいるんだろうな。


 全く合体中にあんだけ俺達に攻撃しておいて自分のことを棚上げするにしてもしすぎだろ。


「だって遅すぎるんだよ。もっと早くならないのか!!」

『これは時間がかかるんだ!!大人しく待ってろ!!』


 俺が文句を言ったら、あっちが言い返してきた。


「はぁ……しょうがないなぁ。ちょっと待ってやるか」

『くっくっくっ!!今度こそアルティメットキャノンバズーカを受けて悔やむがいい!!チャージ!!』


 俺はしょうがないので待ってやることにしたら、イッキーリが再びチャージを始めて高笑いを始めた。


「あがりよ」

「あぁあああああ、リンネ強すぎないか?」

「奥方様が運がいいんだな」

「そういやぁ。こいつは昔からギャンブルが強かったな」


 俺達は余りに遅いので集まってトランプをして遊んでいた。


 その結果リンネが物凄くギャンブルが強いということが分かった。


『ふはははははっ。ついにエネルギーが溜まったぞ!!』

「おお!!やっと来たか!!皆操縦席に着け!!」

『了解!!』


 数十分くらいゲームしていたらようやくエネルギーがチャージされたらしく、俺達はすぐに席に着いて武器を構える。


『受けてみよ!!ギャラクシーストライク!!』


 相手の胸キャノン砲から青白い閃光が飛び出した。


「あんだけ待たせてこれだけかよ!!しゃらくせぇ!!」

 

 跳んできたのは大したことがないビーム。今まで城ボットから発射されたビームと比べればそりゃあ威力は高いけど、ただそれだけだった。


 俺はがっかりしてイクスヴェルトデラックストールハンマーをバットのように振ってビームを跳ね返してやった。


『ぐわぁああああああああ!?』


 城ボットは自らの攻撃を受けて全身を雷を受けたような状態になってダメージを受ける。


「よし、止めだ!!」

『了解!!』


 もうこれ以上待つ必要はない。


 必殺技をぶち込んで終わりにする。


『トールハンマーファイナルモード起動!!』

『ファイナルモードの申請を確認。承認しました。ファイナルモード移行します』


 俺達は合体して初めて使えるようになったトールハンマーの必殺技を繰り出す。


 ハンマーが機体の数十倍の大きさに巨大化した。


「いくぞ!!」

『おう!!』

『ミョルニル!!』


 巨大な雷のようなハンマーの振り下ろしが城ボットを襲った。


『ぐわぁああああああああああ!!』


 イッキーリの叫び声とともに世界が真っ白に染まった。

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