第318話 ミーティング
「おかえり」
「うむ。只今戻った」
サランサから情報を聞いた俺達は船でローグル付近に移動していた。俺達が船に戻り、リラクゼーションルームでお茶を飲んで一時間ほど経った頃、情報収集に出向いていたカエデが部屋に入ってきた。
どうやら情報収集を終えたらしい。
カエデの能力はかなり諜報部隊向きの能力と技術だが、先達に鍛えられたこともあってその力はさらに向上しているため、もう俺以外の誰かに見つかることは早々ないと言える。
その能力を駆使すれば情報収集など朝飯前だっただろう。自分たちの能力に驕っていて、天敵となる相手もいないことか、セキュリティ意識が地上人以上にガバガバな天翼族なら尚更だ。
「どうだった?」
「そうだな。おそらくこの街で手に入れられる情報は手に入れたはずだ」
カエデに戦果を尋ねると、満足そうな表情をとっていたので間違いないだろう。
「そうか、奴隷たちを解放する前に話を聞いておこう」
「分かった」
俺達は奴隷たちを解放する前にカエデの話を聞いておくことにした。
「それでは私が集めてきた情報を放そう。まず……」
カエデが持ってきた情報をまとめると、以下の通りだ。
まず、元々この国には地上人との関係を巡って三つの派閥があった。一つは地上人とも仲良くしていこうという融和派、地上人など自分達のような上位種の奴隷にふさわしいのでどう扱ってもいいという奴隷派、どっちつかずで日和見を決め込む中立派の三つである。
先代の王は融和派だったらしいが、王と王太子が数年前に突然事故死してその後を継いだ第二王子がこれまでの融和派を否定し、奴隷派の旗頭となったらしい。
明らかに事故死には不審な点があったが、証拠は見つからずにそのまま処理されてしまったのだとか。これ以上その点に関してはこの街での情報収集ではわからなかったようだ。
また、アーピアの領主は融和派の領主で、ローグルの領主は奴隷派であるため、ローグルでは積極的に地上人の奴隷を購入することを推進しているらしい。
だから二つの街の様子が明らかに違ったんだな。
俺はカエデの説明を聞いて納得した。
ただ、領主が積極的に動いているのは国王も知っているはずだ。つまり現国王が地上人の奴隷化を積極的に進めている線が一番濃厚だろう。
「奴隷の首輪だが、出どころはおそらく国王だろう。ただ、どこで造られているかまでは分からなかった。それはここまで情報が来ていないと言うのが大きい。王都に着けばもっと探れるはずだ」
最後にカエデは奴隷の首輪の出所について分かったことを教えてくれる。
やはり奴隷の首輪に関しても国王がどこかの工場で率先して作らせているようだ。在処に関しては散らばりすぎて分からないらしい。
奴隷の首輪を自由に生み出せるとなるとかなり驚異的だ。
この辺りは奴隷の首輪の持つ術式などを解読して同一パターンを理解できれば、その術式を展開した時に発生する魔力の波動を感知して検索できる装置でも作る必要があるだろう。
そして、奴隷の警備に関しては街や建物の警備同様に、大した気を払っていないらしくガバガバだったそうだ。
天敵がいないというのも考えものだ。どうしても緊張が保てないし、相手よりも成長しようという気持ちが育たない。だからこんなにもセキュリティ意識がひどいのだろう。
まぁ奴隷解放を進める俺達にとって好都合であることに違いないが。
「それじゃあ、俺達が得た情報を共有しよう」
「頼んだ」
カエデに俺達がつかんだ奴隷の居場所を伝える。
「なるほど。些か場所が多いな。バレる前に開放を終わらせるとなると分担した方が良いと思うが……」
「うーん。船の牢屋に送るには俺がやらないといけないからなぁ」
確かに今回の作戦のネックはその場所の多さだ。俺一人で対応するには時間が足りなさすぎる。
しかし、帰投機能に関しては一つしかないインフィラグメの機能なのでどうしようもない。付与魔法でも今はまだ転移に関しては実現できていないからなぁ。
『そんなあなたにインフィラグメの子機はいかがですか?』
「はぁ!?そんなものあるのか?」
思い悩んでいる所にいつものようにタイミングよくやってくるバレッタ。
しかも一つしかないと思っていたインフィラグメの子機があるという。
『ええ、こんなこともあろうかとワイスに作ってもらいました。機能に関しては帰投機能のみの簡易的なモノです』
「完全にピンポイントじゃねぇか!!」
機能は完全に今の状況に合わせたモノだった。
絶対先の事を知ってやがる。
『はぁ……なんのことをおっしゃっているのか分かりませんね。それより必要ですか?必要じゃないんですか?』
「必要だよ!!話聞いてたから分かるよな?」
バレッタは恍けるように答えた後、分かり切っていることを俺に迫る。
『まぁそうですよね。倉庫から取り出して二人に渡してください』
俺の答えに満足したのかインフィラグメの子機を二つ倉庫に入れたらしい。
「はぁ……ありがとう。助かったよ」
『パーフェクトメイドですからね、これくらい当然のことです』
俺がため息を吐きながら礼を言うと、バレッタは満足そうな声色で答える。
バレッタが綺麗なカーテシーを決めている姿が目に浮かんだ。
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