第297話 スイーツ牧場
「どうだ?」
インフィレーネで辺りを遮断し、見つからないようにした上で、物陰に隠れて様子を窺うリンネに合流して状況を尋ねる。
「今の所動きはないわ」
リンネは俺の方を振り向いて首を振った。子供たちは皆で輪になってしゃがんで何かし始めていた。
俺もインフィレーネで先に見える家に探りを入れる。
家の見た目はヘンゼルとグレーテルのお菓子の家のようにお菓子のような素材で作られていて、見た目はログハウスが一番近いだろうか。
探知では中に数名の気配があるが、今はちょうどお昼時。ご飯でも食べているのか一か所に集まって動く気配がない。
ただ、おそらく天翼族だ。
天翼族は生まれつき強い力をもっているというだけあって、人間の冒険者のCランク程度の力は感じた。確かにそれほどの力が一般人でもあるとすれば、地上の人間を馬鹿にしてしまうのも分からなくはない。
「何か分かった?」
「ここからだと分かるのは人数と力の大きさ位だな。人数的には制圧するのは簡単だし、誰か一人でも負けることはないだろう」
暫く黙っていた俺にリンネの確認するような質問に、俺は肩を竦めて答えた。
結構距離が離れているのでここからインフィレーネで探れるのはそれくらいだ。それ以上となるともっと近づいて、というか中に入らないと難しい。
「ふーん。どうするの?制圧しちゃう?」
「いくら相手を見下す種族とはいえ、俺達が見下されたわけじゃないし、あっちから襲い掛かってきたわけでもない。流石に相手が何もしていないのに襲い掛かったら野盗と何も変わらないだろ」
「まぁねぇ。でもこのままってのもねぇ」
リンネが相変わらず過激なので諫めると、彼女もそれは分かっていたのか、腕を組んで考え込むような仕草をした。
「そうだなぁ。カエデ、中の様子を窺ってこれるか?」
「ん?それは簡単だが、行ってくるか?」
話を振られた隠密行動に適任のカエデは、いつでもいいぞとばかりに問い返す。
「ああ、ちょっと情報が欲しいからな」
「わかった。行ってこよう」
俺の返事を聞いたカエデが影に沈んで姿を消し、影だけが視線の先にある家の中に入っていった。
「戻ったぞ主君」
「おお、おかえり。まずはこれでも食べろ」
「おお、いただこう」
カエデが戻ってくるまでの間、俺達はお昼時と言うこともあってご飯を食べていた。帰ってきたカエデには、食べながら報告してもらおうと思って席を促すと、彼女は俊敏な動きで椅子に座り、料理を食べ始めた。
「それで、どうだった?」
料理を口いっぱいに頬張るカエデに小屋の中の様子を尋ねる。
「もぐもぐ……ごくんっ。ああ、アイツらなこの森の管理をしている天翼族らしい。なんだか昨日今日で森で飼っているモンスターが軒並み激減して困っているみたいだぞ?」
今食べている料理を食べ終えてからカエデはニヤリと笑ってそんなことを言った。
なるほど。ここにいるお菓子モンスター達はこいつらが育てているのか。放し飼いにもほどがあるが、それもこの天空大陸での伝統的な飼育方法なのだろう。
特に私有地らしい立札などもないし、俺達がそのモンスターを狩ったことも証明できないからこのまま貰っておこう。
「他に何か言っていたか?」
「ここはどうやらこの大陸中のお菓子を作っている森で、大陸各地にスイーツを出荷しているスイーツ牧場らしい。世話をさせていた地上人の奴隷が逃げ出してしまい、現在管理があまり行き届いていないようだ。これからまた新しい地上人を捕まえて奴隷にしようかと相談していたぞ」
「全く地上人を何だと思ってるんだ」
カエデの話を聞く限り、どうやら同情の余地なしの悪人達のようだ。
「これはお仕置きの必要があるな」
「待ってました!!」
ニヤリと笑って俺にリンネが力こぶを作って応えた。
「それじゃあ、正面から顔を拝みに行きますか!!」
「ええ」
「了解した。ただ、その前にご飯をちゃんと食べさせてくれ」
「はいはい、分かってる」
黙々と食べる子供たちと同様にカエデも目の前に並べられた沢山の料理に手を付け、無言でひらすらに食べ続けた。
それから十分ほど経って昼食を食べ終えた俺たちは、インフィレーネの隠蔽を解いて、正々堂々正面から巨大なお菓子で作られているような小屋へと向かって歩き出した。
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お知らせ
誠に勝手ながら、本日から当作品は隔日投稿へと切り替えさせていただきます。
楽しみにされている方には誠に申し訳ございませんが、
ご了承くださいますようお願いします。
引き続き、「おっさんと超古代文明」をよろしくお願いします。
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