第286話 思いついた悪だくみ

「ああ。君がここを管理しているアンドロイドメイドか?」


 俺が、司祭メイド服を身にまとい、金髪のロングヘア―をお尻程度まで伸ばした彼女に問いかける。


 やはり姉妹アンドロイドというだけあって顔だちが他の姉妹とそっくりだ。


「はい。申し遅れました。司祭型メイドのメテロノーナと申します。ノーナとお呼びください」

「分かった」


 彼女は大和撫子を体現しているような奥ゆかしさを保ちながら、深々とお辞儀をして名乗る。


 ちゃんと個性があるんだよな、それぞれ。


「それじゃあ、ここではどんなことが出来るんだ?」


 他の場所は比較的分かりやすかった。


 無限図書館、英霊の園、万能工房、生命研究所。どれもこれも名前がある程度やることを示していた。ここは水の神殿っていうくらいだから水が関りがあるんだろうけど、目の前にあるのは大きな水球だけだし、他の部屋も無さそうなので、いまいち想像がつかない。


「ここでは世界中、ありとあらゆる水を自在に操ることができます。なんならどこか津波にでも起こして滅ぼしましょうか?」

「君はなんでそんなに物騒なのかな?」


 この世界には結構過激な女の子が多いな。


 世界樹もなんか似たようなこと言っていたし。


「いえ、ここに来られたということは何か嫌な事でもあって、証拠もなく滅ぼしたい何かがある物かと……」

「そういうのはないから……前所有者は一体何をやっていたんだ?」


 俺は疑問を抱かずにはいられなかった。


 前所有者よ、あなたに一体に何があったというのか……。

 まぁ誰にでも掘り起こされたくない黒歴史という物はある。

 ここはそっとしておくのが無難だろう。


 とにかく世界中の水を操れてしまうらしい。超古代文明の技術って言うのは相変わらずとんでもない代物だな。全大陸を水没させる、なんてこともできてしまうんだろうな。


 こんな物、俺以外のこの世界の奴に絶対見せられないし、渡せないな。何に使われるか分かったものじゃない。


「ひとまず現状すぐに何かをやってもらうようなことはない。ここには観光のようなもので来ただけだ。海底にある神殿と言えば浪漫の一つだからな」

「なるほど。前の主上も同じようなことを言っておりました。なるほど。私の浅学を恥じ入るばかりです」


 俺が今日来た理由を述べると、なぜか恐縮されてしまった。


「いやいや、そんなに畏まらなくていいからな」

「いえいえ、私など主上の足の小指にも及ばぬ未熟者。もっと精進しなければなりません」

「いやいや……」

「いえいえ……」


 お互いに恐縮しあって終わりのない旅に出る。


「もういいかげんにしなさい!!」


 そんな俺達を見てリンネが一括して叱った。


「そんなに恐縮し合ってもなんの意味はないんだからしゃんとしなさいよ」

「はい。申し訳ありませんでした!!」

「面目次第もありません」


 リンネに起こられた俺たちは深く反省して頭を下げた。


 ちょっと行き過ぎた行動になってしまったな、反省。


「ちょっと聞いてみたいんだが、あのヴェーネの寺院や水流はどうやって作られているんだ?」

「それはこの水球、『水神球』の力ですね。『水神球』の力で水を寺院の形に固定しています。水流は位置だけ固定していますね」

「へぇ、こんなことまでできるんだなぁ」


 俺がちょっと気になったことを聞いてみると、思っていた通りの答えが返ってくる。


 やはりあの街にある寺院も水流も『水神球』と呼ばれる装置に力らしい。


「そういえば、今思着いたんだが、ちょっと近くにある街にいる女の子と俺たちの仲間に見せてやりたいものがあるんだけどいいか?」

「はい、なんでございましょうか?」

「それはだな……」


 俺はたった今思いついたことの詳細をノーナに伝える。


 これを見たら子供たちは喜ぶんじゃないだろうか。

 そう考えるとワクワクしてくる。


「まぁ!!それは素敵なお話ですね、主上。その女の子も、お仲間とそのお子様たちもさぞ喜ばれることでしょう」


 その話を聞いたノーナはパアッと大輪の花を咲かせたような笑顔をみせて喜色を現した。


「リンネはどう思う?」

「いいんじゃないかしら?そんな壮大なものは見たことがないし、私も見てみたいわ」


 リンネからの同意も得られたということでちょっとやってみてもよさそうだなと思った。


 世界中を旅してきたリンネが見たことがないっていうんだから今回の話はなかなか見られないイベントになるだろう。その前に何をするにも大事なのはほうれんそう。また女王に会って許可をとっておいた方がいいだろう。


 そうしないと海に出ている船が巻き込まれてしまったり、海を見た街の人たちが天変地異とか世界の終わりだと勘違いして大騒ぎになってしまう可能性が大いにある。


 そうならないためにも今回も根回しは必要だ。


「それじゃあ、どうする?もう少しこの辺りを散策していくか?」

「うーん、そうね、一通り見て回ったし、今度はいつでも来れるんだから、今度でいいわ」

「分かった。それじゃあヴェーネの女王の所へ向かおう」


 俺たちは転移でヴェーネの近くに移動した。

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