第283話 海の中
「海の深いところってこうなってるのね」
船のブリッジから真っ暗な世界を眺めるリンネ。
しかし、船からの超古代文明の技術により、遠くまで見渡せる光が出ていて、深海の世界を余すところなく堪能できる。もちろん相手に気づかれることもない。
そこには普段見ることができないような不思議な形をした魚や、淡い光を放つピンク色の魚の群れ、リヴァイアサンには及ばないもの巨大なサメのような生物。
様々な不可思議な生物との出会いが俺達を待っていた。
「海中に潜ったことはないのか?」
「それは勿論あるにはあるけど、こんな深くまでは潜らないし、潜る必要性もないからね。こんな所で襲われたらひとたまりもないからね。息もずっとは続かないし」
水圧の問題はステータスでどうにかなるのかもしれないが、呼吸の方は何もなければどうしようもない。
それに光の問題もある。強い光を使えばすぐに水中にいるモンスターに見つかってしまい、あまり身動きが取れない状態で敵からの攻撃にさらされてしまう可能性がある。
「ええ、基本的に海に出る時は船の上にいるし、ここまで潜って来れるような船なんてケンゴ以外持っていないでしょう?」
「そうかもしれないな」
今まで見てきた技術水準だと、潜水艦レベルの技術はまだまだ届きそうにないという印象だ。船に関してはドワーフが最先端という感じだが、それでも蒸気船を作るか作らないか、という程度。現状ではそれほど深くまで潜る技術はない。
「だから今までこんな光景は見たことがなかったわね」
「ご感想は?」
「見れてよかったわ。これも一つの冒険ね」
俺が実際に見てみた感想を聞くとにこりと笑ってを浮かべてそう言った。
「この辺りの深海魚は食べられるんだろうか?」
「え?あんなグロテスクな魚って食べられるの?」
俺は水族館の水槽の下と通るような状況で椅子に座って上を通る魚たちを見ながらそんなことを言うと、リンネは驚くようにこちらを見る。
「いや、こっちの世界の魚は分からないけど、俺が元いた世界ではかなり美味い深海魚もいたからな」
「へぇ、面白そうね」
『食べられる魚は多いですよ。特にこの辺りは』
俺達の疑問にバレッタが当然のように答えてくる。ただし、今回は船の中にはいるが、俺達が一応新婚旅行とあって念話での参加である。
もはや今回の新婚旅行も全部覗かれているとようなものなので、そのシチュエーションに勝手に興奮してしまうようになった俺とリンネは手遅れである。
「マジか。食べてみたいな」
「そうね、ちょっと気になるわ」
『もちろん用意しているのでご安心ください』
「流石バレッタ!!」
今回も俺達の要望を先取りしてきちんと用意してくれているバレッタはやはり有能だった。
俺達は食堂に移動すると、軽く味付けした焼くのはもちろん、刺身や煮付け、みそ汁、唐揚げ、天ぷらなどなど様々な料理がすでに並べられていて、早速味合わせてもらった。
「美味いな」
「ホントに美味しいわね。これがあんなヘンテコな形をした魚たちだなんて料理からは信じられないわね」
日本で食べた料理と同様にこちらの深海魚たちも非常に美味でした。リンネはその美味しさに見た目と美味しさが一致しないことをとても不思議がっていた。
それから再びブリッジに戻ると、少し先にこれまで存在しなかった者達が現れる。
それは、完全に形を残した街の様な建物達だ。そしてさらにちかづくと、その中央に巨大な神殿らしき建物が見えた。それらはドームの様な結界に覆われているおかげで姿を保っているらしかった。結界が光を放ち、街全体が青い海の中で浮き上がっているように見えている。
「綺麗ね」
「そうだな」
青い海の中にある街という風景は幻想的でそれはそれはとても美しいものだった。
「バレッタ、結界はどうにかできるか?」
『ええ、問題ございません』
「それじゃあ、頼んだぞ?」
『畏まりました』
バレッタが自信をもって答えたので俺たちは結界へと突き進んでいった。
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