第281話 海上の宴

 謝神祭での役割を終えた俺たちは、一度宿へと戻り、ラムを送り届けた後、姿を隠して街から遠く離れた海上へと向かって空を飛んでいく。


 リンネも指輪の力を使いこなし、すっかり空を飛ぶのに慣れているので、二人で横並びの状態だ。


「私達だけでいいの?」

「一応新婚旅行って事で二人で旅行してきたけど、リンネがいいなら皆呼んでもいいぞ?」

「せっかくリヴァイアサンと宴をするなら人も多い方がいいんじゃない?」

「それもそっか」


 俺達は一時的に新婚旅行という縛りを解いて、カエデやイナホ達は勿論のこと、高校生達や世話のなった評議会の面々、ギルドの受付嬢などなどを自分たちの宴に呼び出すことにした。


 インフィレーネの障壁の色を付けて、海の上に敷き詰めて障壁で一定範囲の座敷のようなものを作り出し、そこに呼んだ連中を送り込んで酒と料理を提供する。


「それじゃあ、呼び出すか」

「ええ」

「よし、お前ら、リヴァイアサンを呼び出すからビビるんじゃないぞ!!」


 各々が酒をもった状態でいつでも飲み始められるという状態になった頃、俺はリヴァイアサンを呼び出すことにした。


―ブォオオオオオオンッ


 再び重低音が大海原に波紋を描くように広がっていく。


―ザパーンッ


 今回は近くで待機していたせいもあってすぐにリヴァイアサンが海から顔を出した。


『うぉおおおおおおおおお!!これがリヴァイアサン!!マジでデカい!!』


 連れて来られた人物たちが飛び出したリヴァイアサンに注目し、驚愕して叫ぶ。


 そりゃあ無理もない。こっちの人間達にして見ればいるかどうか分からなかった存在だし、俺達日本人にしてみればあれほどにデカい生物を間近で見る機会がないので、思わず驚いてしまうのも仕方がないことだ。


『ようやく来たか、わが友よ』

「ああ、諸々終わったので、俺達は俺達で宴を楽しもうぜ」

『うむ。そうさせてもらおう。それでは早速だが……』

「わかってる。クラーケンだろ?」

『う、うむ』


 リヴァイアサンは出てくるなり、モジモジとクネクネ体を揺らす。本来ならその動きで津波が起きるほどだが、自分で制御しているのか起きることはなかった。


 俺はリヴァイアサンがクラーケンを欲していることを理解し、クラーケンを調理した料理を出しやる。バレッタが張り切ってクラーケンを狩ったのか大量の料理が乗った滅茶苦茶デカい器が現れる。


『デッカ!!』


 器の大きさにリヴァイアサン以上の衝撃が俺達を襲い、思わず叫ぶ。


 なんてったってリヴァイアサンの体に負けないくらいのサイズ感だからな。これならリヴァイアサンも食い足りないということもないだろう。


『うぉおおおおおお!!これだけのクラーケン料理をもらえるとは!!思わぬ僥倖!!』

「ははははっ。喜んでもらえて嬉しいよ」

『うむ、うむ。今日はなんと嬉しい日だ!!』


 リヴァイアサンは嬉しそうに体を動かす。


 そこまで喜んでもらえたなら呼んだ甲斐があると言うものだ。俺は何もしてないけどな。


 それから俺たちひたすらに飲んで歌って、騒ぎ合った。それは真っ暗になった後も続いた。

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