第225話 脳筋
俺とリンネは朝起きた後、再びオネエの執務室にお邪魔した。
「あらん♡昨日はお楽しみだったわねん♡」
「お楽しみなどした覚えはないが?」
「全くもう……様式美がわからないのかしらん?♡」
昨日は流石にリンネは疲れてすぐに寝てしまったし、俺も精神面で疲労が溜まっていたせいですぐに夢の世界に旅立った。
イチャイチャをしている暇なんてなかったっつーの。
……嘘。実はほんの少しだけイチャイチャしました!!
どちらも気づけば夢の中だったが。
「様式美……なんて語れるような綺麗な身体じゃないだろ、オネエは」
「失礼ねん♡ピチピチの処女よん♡確かめてみる?♡」
「そんなもんこっちから願い下げだ」
「全くなんてひどい男なのかしらん♡」
全くよく言うよ。酷いのはどちらだ。
昨晩は夢の世界に何やら侵入しようと試みていた不届きな連中がいた。
確実にこいつの差し金だろう。あわよくば俺を殺したり、虜にして全てを得ようという浅はかな欲のためなのか、はたまたリンネの隣にいる男として試されたのかは分からないが、全く食えない男だ。
「私は女よん♡」
くっ!?まさかこいつにまで俺の心が読まれているのか?
勘弁してくれよ!!
それはともかく、しらばっくれているが、少し頬がピクピクと痙攣している。
自分の部下たちがなす術なく、自分たちの領域に夢に侵入できなかったから色んな感情が渦巻いているのだろう。その上、バレッタ先生がお帰り願ったので、侵入を試みた奴らはトラウマ的な何かを植えつけられているに違いない。
「それじゃあ、俺達は戻るから準備しておいてくれよな」
「ふぅ……分かったわん♡」
俺たちは挨拶を済ませると再び馬車に乗り、一日かけて再び国境へと戻ってきた。帰りは監視や尾行が居ないか十分に注意した後、途中まで転移で飛んで馬車に揺られた。ただし、ターボお前は駄目だ。
「おかえりなさいませ。話はちょうどこちらにも届いております。それにしても早い馬車ですなぁ。伝令燕と同じスピードとは羨ましい限りです」
「ふふん、ケンゴの馬車だから凄いのは当り前よ!!」
出迎えてくれたのは俺達の対応をしてくれた司令官。
そういえば名前を聞いてなかったか。
「えっと……」
「はっ。名乗りもせずに申し訳ありません。私は総司令官を務めるバルスと申します」
俺が申し訳なさげに言葉を詰まらせると、察してくれて自己紹介をしてくれた。
滅びの呪文とは全くやるじゃないか!!
何がやるのかは知らん!!
「報告!!ヒュマルス王国軍が大騒ぎになっております。どうやら兵士の多くが腹を下し、食料と武器防具は壊滅している模様!!」
「なんだと!?」
そこにカエデたちの作戦が成功した報告が届いた。俺たちはすでに報告を受けていたので特に驚くことはない。
しかし、カエデたちちょっとやりすぎじゃない?
もうほとんど瀕死じゃん?
「あぁ。それ俺たちの仲間がやったんだ。バルス攻めるなら今だぞ?」
「なんと!?それではさっそく作戦会議に入らせてもらいます」
「ああ。あっちはほとんど戦闘能力がなくなっている。だから大した作戦を立てなくても問題ないはずだ。さらに俺がお前たちに補助魔法をかける。それだけやれば大丈夫だろう」
「分かりました。さっそく議題にあげてすぐに侵攻したいと思います」
バルスは兵士たちに指示を出し、颯爽と大きめの天幕に入っていく。そして数十分もすると、バルスは俺たちの元に戻ってきてあまりに爽やかな笑顔を浮かべてこういった。
「全軍で突撃します!!」
魔族は思ったよりも脳筋らしい。
作戦会議とか一体何を話し合ったんだ?
いや別に相手は死に体だからそれでいいと思うけどな?
あくまで作戦会議をしました、っていう証拠が欲しいだけなのだろうか。
とりあえずヒュマルス王国は宣戦布告もせずに攻めてきたが、こっちは戦争の常識としてちゃんと宣戦布告した後、攻め入るらしい。
あのクソ国王の国とは大違いだ。
俺の視線の先には行軍のため隊列を作り始める兵士達の姿があった。
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