第217話 ショータイム

 イヴに死体の回収を頼み、俺達はヒュマルス王国にいる魔族とすでに実験に使われてしまった魔族を解放し、廃棄されているだろう魔族達の体を集めに向かうため、王国の研究所へと転移した。


「おお、命の恩人様、どうかされましたか?」


 研究所の牢屋がある区画に入るなり、魔族達のまとめ役らしき人物に声を掛けられた。他の魔族達は毛布にくるまり、俺が与えた食料を頬張っている者たちが多い。


 きちんと全員に行き渡っているようで問題はなさそうだ。


「ああ。用意が整ったからお前たちをここから出そうと思ってな」

「なんと!?ホントですか!?」


 俺が用件を伝えると、目が飛び出るほど驚く魔族代表。


「ぽちっとな」


 そんな代表を尻目に懐かしのセリフと共に指をぱちんと鳴らす。


 押してないじゃんという突っ込みは聞かないからな!!


―キキー……


 何もしていないのに全ての牢屋の扉が解放された。


「ホントだろ?」

「あ、あははは。はい。ほんとでした」


 代表に向かってニヤリと笑うと、現状についていけないのか魔族代表は苦笑いを浮かべた。


「とりあえず、別の場所に送るから後はそっちで説明を受けてくれ」

「へあ!?」


 魔族代表が間抜けな言葉を吐く間もなく、俺は転送機能で一旦船の牢屋に放り込んでいく。実験に使われてしまった魔族たちがもとに戻るまでは部屋にいてもらう予定だ。船ではバレッタが説明を行っていることだろう。


 俺とリンネとカエデは、手分けしてすでに実験体となってしまった魔族達を探していく。お互いに念話でやり取りを行い、俺が回収してオリジンへと連れていくという作業を繰り返し、数時間程でやっと作業が完了した。


「ふぅ~。疲れたな」

「お疲れ様」

「うむ。休むがいいぞ主君」


 俺たちは船の一室の椅子に腰を下ろし、流石に働き過ぎて腹が空いたので食事を摂り、休息をとる。


 一応見つけられる限りの魔族は回収したはずだ。最近より昔に攫ったり、連れてこられたような人物となると流石に分からないが、少なくとも勇者たちが関わってからの対象はすべて回収しただろう。


 それなら問題ないはずだ。


『マスター、準備が整ったけど、どうする?復元作業は見るかい?』


 暫く休んでいるとイヴから連絡が来た。


 うーん、グロそうだなぁ……。

 とは言え、魔物の討伐とか解体とかでグロ耐性は上がったし、ちゃんと復元するかどうかを見届ける必要もあるだろう。

 仕方がないか……。


「俺は見に行くわ。リンネとカエデは復元作業見に行くか?」

「うーん、そうね。あんまり気持ちの良いものでもなさそうだし、私はいいわ」

「私は見に行こうかな。面白そうだ」


 リンネは思いのほかグロ耐性が低いらしく、待っていることにしたようだ。一方カエデは元々の忍者の訓練のせいなのか、元々の性格なのか見に行きたいらしい。


「了解。それじゃあ、行ってくる。カエデ行くぞ」

「いってらっしゃい」

「ああ今行く」


 俺とカエデはオリジンへと転移した。


「待っていたよ、マスター。早速行こう」

「あ、ああ」


 俺がオリジンに着くなり待っていたイヴに手を引かれ、研究所の奥へと誘われていく。その後は慌ててカエデが追ってくる。

  

「さぁさぁ、お立合い。世紀のマジックショーの始まりだよ!!」


 案内されたの劇場のような部屋。舞台があり、その上でピエロかのように振る舞い、イヴが話始める。舞台上にはベルトコンベアーのような機械が置いてある。そして俺とカエデは舞台の最前列の椅子に座らされていた。


 俺は一体何を見せられているんだ?


 ベルトコンベアーの右側から水槽に入った魔族が流れてきて、舞台の真ん中で止まった。


「さぁさぁお立合い。まずはこれをかぶせまーす」


 水槽の上から何やら仰々しい機会が下りてきて、水槽をすっぽりと覆ってしまう。


「後は僕が合図をすると、なんとあっという間に復元しちゃうんだよ?いいかい?ワン、ツー、スリー!!」


 勿体ぶりながら進行していく謎のマジックショー。


 しかし、イヴが合図をして被さっていた機械が上に上がると、そこには復元された魔族がいた。なぜかムキムキのマッチョになって……。


「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」


 魔族は水槽の中で気が狂ったように叫ぶ。


「一体どういうことなんだってばよ……」


 困惑した俺の呟きは誰に届くともなく空間に消えた。

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