第164話 飲み比べ大会①

 次の日は前日結構騒いだのでリンネたちと奉納祭をゆっくり見て回り、奉納祭の活気を堪能しながらのんびりと過ごした。


 そしてさらに次の日。


「今日はドワーフの飲み比べ大会でも見に行くか」

「いいわね。賭けもやってるから結構盛り上がるわよ」

「おお、それは面白そうだな」


 地球にいたころはギャンブルと名の付くものはほとんどやったことがなかった。


 ソシャゲのガチャは良く回していたが、あれはギャンブルではない。ないったらない。いいね?あれは当たるまで回せば100%勝ちだから!!


 俺達は出店で朝食を食べながら飲み比べ大会へと向かった。


「うわぁ、物凄い人だな」

「そうね、今年はいつもに増して人が多い気がするわ」


 会場が近づくと、人がほとんど隙間なく、密100%中の100%な状態であった。


 よっぽど人気らしいな。

 奉納祭のメインイベントの一つだから当然と言えば当然か。


「お前たち、私達から離れるんじゃないぞ?」

『はーい』


 カエデは子供たちに注意を促している。


 心配しなくても俺がインフィレーネで完全に守るけどな。

 危機意識を持たせるってのは大事だと思う。


 俺たちは野次馬たちの壁を通り抜け、入り口にいる門番にチケットを見せてフリーパスでVIP席に案内された。


 会場は競馬場のような作りになっており、真ん中にステージが用意されていた。


 席数から見るに10人が大会に参加するようだ。


「もうすぐパドックが始まるらしいぞ?」

「おお、それは楽しみだな。今年の参加者は一体どんな人物たちなのか気になる」


 パドック?


 確か競馬のレースに出走する馬がスタッフにひかれて周回する場所で、馬の状態を観察できる感じだったか?


 良く知らないが、飲み比べ大会の参加者が皆の前に出てくるってことなのかな。それらしい場所がVIP席のすぐ近くにあって、間近で選手の様子を見られるようになってるっぽい。


 誰だ?こんな競馬と飲み比べを合わせたみたいな文化を持ち込んだのは……。


「おお!!出てきた!!」

「ホントだ!!」

「おぉ~すごい迫力だ!!」


 様子を窺っていると奥から屈強な男たちが、ゾロゾロとパドック風の場所に行進して入ってきた。


 全員が並々ならぬ実力者、という雰囲気を醸し出している。


「おお!!あいつは飲み比べ大会常連のマッキンじゃないか!!今日は肌の色つやもいいし、顔にやる気が漲っていて体調も良さそうだ」

「なるほど。今日は期待できるかもしれないな」

「そうだな。優勝も狙えるかもしれないな」


 近くに居る賓客達が出てきた参加者の情報をべらべらと喋ってくれるので、黙って聴き耳を立てることにした。


 ふむ。最初の男は順当にドワーフか。全体的にやはりドワーフの参加者が多そうだ。ドワーフ以外はほとんどいない。十人中二人だ。一人は獣人。もう一人は人間ぽい。


 やっぱりドワーフが酒に強いんだなぁ。その中で残ったあの二人はかなりの強者だろう。


「おお、今年も参加していたか。ウワバミヒューマンとサケノミタイガー。昨年は惜しくも優勝は逃したが、どちらもかなり競っていた。見る限り今回はバッチリこの大会に体を作ってきている。マッキンもうかうかしてられないな」

「ほう。確かに体がかなりキレているな」


 ちょうどよく人間と獣人について解説してくれる賓客。


 それにしてもウワバミヒューマンとサケノミタイガーとかふざけた名前してんな?流石に偽名だよな。


 他にも強豪そうなドワーフたちが、観客達に向かって手を振りながらパドックを何周かした後、再び控室へと戻っていった。


「なかなか面白いな」

「そうでしょ?皆この大会に賭けてるのよ」

「皆凄い気迫だったもんな」


 俺の呟きにリンネが物知り顔で答えると、俺も同意するように返事をして頷く。


「皆つよそう」

「ちょっと怖いかも」

「皆カッコいい!!」

「筋肉がいいな!!」


 子供たちもパドックを見て興奮していた。


「なかなかの強者もいるようだ。飲み比べ大会もバカにならないな」


 カエデは一人ブツブツ呟きながら一人頷いていた。


「これより、飲み比べ大会を開催します!!」


 パドックや雑談に花を咲かせている内に遂に大会が始まった。 

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