【書籍化】おっさんと超古代文明〜巻き込まれて召喚され、スキルが言語理解しかなくて追放されるも、超古代遺跡の暗号を解読して力を手にいれ、楽しく生きていく〜
EX.10 黒幕たちのお茶会(ワルプルギス)(アンドロイドメイドSide)
EX.10 黒幕たちのお茶会(ワルプルギス)(アンドロイドメイドSide)
「よく集まってくれたわね、皆」
淡い紫色の心もとない光だけが辺りを照らし、薄暗い部屋の中でバレッタが労いの言葉を掛ける。
部屋には白いソファーのような椅子が円を描くように七つ浮いており、その内四つに人が座っていた。中央に真っ白なテーブルが鎮座し、四人の前に紅茶のカップが置かれ、湯気を立てている。
「いいえ、お姉様に呼ばれたらいつでも集まるのが当然ですよ」
「そうだな、姉貴ならいつでも歓迎だぜ」
「うむ、我も完全なる侍女である姉上の言葉であれば、いつでもはせ参じよう」
それぞれ、アンリエッタ、テスタロッサ、ワイスと呼ばれる超古代遺跡の管理をしているアンドロイドメイド達である。
「集まってもらっておいて悪いけど、特に特別なことがあるわけではないわ。私たちももう四人が目を覚ましたから、少しお茶会でもしようと思ってね」
バレッタが紅茶のカップを持って一口飲んでから今日の趣旨を述べた。
彼女たちは食事や水分を摂る必要はないが、ほとんど人間と変わらない造りのため、摂取も消化も可能である。ちなみに排泄はしない。
「確かにこの四人が集まってゆっくり話をするのも久しぶりですね」
「一億年ぶりだからなぁ」
「とはいえ、我も起きたのは最近だ。一億年というほど長い期間会っていないという感覚はないな」
各々感慨深げにつぶやく。
「それで起きてからこの星を見てみてどうかしら?」
「そうですね。知識レベルではいえば私たちが稼働していた時代の二千年は前の知識レベルですね」
「戦闘力も似たようなもんだな」
「技術力もその程度のものだ」
「はぁ……私たちが寝ている間に随分と衰退したものね。それぞれの種族の身体能力その他諸々が随分と弱くなっていたし、モンスターも弱いものが多かったし」
彼女たちは起きてから超古代遺跡の力を使って世界を調査していた。その結果、自分たちを脅かすような輩など存在しないということを理解したと同時に、少し残念に思った。
なぜなら自分たちが力を振う機会があまりないだろうからだ。
「これはケンゴ様にもっと私たちを使ってもらえるようにゆうど……コホン……お願いしないといけないわね」
「そうですねぇ。本をもっと集めてもらわないと……グヘヘ」
「俺ももっと戦闘データがほしいな」
「我も我が至高なる主とともに開発したいものよ」
少女の形をした者たちは自分たちの主に思いはせる。各々自分の得意分野に没頭したい気持ちが溢れてしまう。
「そういえば主はなんでさっさとこの星を支配したり、俺達を使ってモンスターを殲滅したりしねえんだ?」
「それはつまらないからよ、テス」
ふと思い立ったテスタロッサがバレッタに問いかけると、優しいを微笑みを浮かべてバレッタが答える。
確かにアンドロイドのテスタロッサに言わせれば、ケンゴのなめプは非合理的で意味が分からないのだろう。
「強すぎる力は達成感を奪うわ。命の危険がなくて、多少苦労する程度のやりがいは欲しいのよ。今でさえケンゴ様は自分で縛りを作って楽しんでいる状態。それを解放すればあっという間に終わるけど、後には何も残らないわ」
「そういうもんかよ。俺なんてさっさと面倒事を終わらせて、修行でもしていたいぜ」
バレッタの答えに、背もたれに思い切り背を預け、足を組んで理解できないと言った表情で返事をするテスタロッサ。
「まぁ気長に待ちましょう。どうせケンゴ様の力はこの星に収まりきらない。早ければ数年、遅くても数十年でこの星も飽きてしまうでしょう。私たちにとって数十年など瞬きに等しい時間なのだから」
「そうですね。それまではこの星の創造物たちと思う存分楽しんでもらえればいいでしょう。私たちは外に出る準備をしましょう」
「うむ、私も未来に向けて準備するとしよう」
バレッタに同調するアンリエッタとワイス。
うふふ。あはは。
その後もケンゴの知らないところで彼女たちのお茶会は続いた。
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