【書籍化・本編完結】おっさんと超古代文明〜巻き込まれて召喚され、スキルが言語理解しかなくて追放されるも、超古代遺跡の暗号を解読して力を手にいれ、楽しく生きていく〜
EX.09 新しい日常(ユウキ・コウノSide)
幕間5
EX.09 新しい日常(ユウキ・コウノSide)
「おい、さっさと進め!!」
後ろのヒュマルス王国の兵士が俺に怒鳴るようにして俺を小突く。
「ちっ!!」
俺は舌打ちをして仕方なしに前へと進んでいく。
俺が兵士になんでこんなことを我慢しているかと言えば、クビにつけられたチョーカー、隷属の首輪という道具にせいだ。この首輪は、この国の人間に対して危害を加えることが直接、間接問わずできなくなり、その上軍部や貴族、そして王族連中に命令権があり、それに逆らうことができないからだ。
できない、という表現にはほんの少し語弊があるが、逆らおうとすると立っていられない激痛と、めまいや吐き気と言った症状も合わせて襲ってきて、逆らうどころではなくなる、というのが正しい。
俺が連れてこられたのは演習場、そこには他のクラスメイト達も集められていた。
「お前も連れてこられたのか」
「そっちもな」
俺は自分と同じように兵士に連れてこられた健次郎を見て話しかけると、ヤレヤレと呆れたような諦めたような表情を浮かべている。
「勝手にしゃべるな!!そこに並べ!!」
兵士たちがすぐに並ぶように指示し、俺達は学校のようにきれいに整列した。
俺たちの前には兵士がずらりと並び、その中央には俺たちの訓練も担当してくれた騎士団長が目を瞑って仁王立ちしている。
「集まったか……。お前たちはここに集められた理由が分からないようだな。それでは俺から説明してやろう。お前たちにはこれから任務をこなしてもらう」
俺たちが全員そろったのを見計らって目を開き、俺達を見下すような視線で宣った。
俺たちに一体何をさせようっ言うんだ?
「おい!!メイドはどこに行ったんだよ!!」
「そうだ!!ミスリちゃんはどこにいったんだ!?」
団長のあんまりな話しぶりにクラスメイトの一部が騒ぎ立てる。
確かにこのチョーカーを付けられて以降、俺の担当だったナルがいなくなってしまった。
あの時のナルのセリフを思い出すと、おそらく全員が国王の意を汲んで動いていた者たちだったんだろう。そして任務が終わったから元の場所に戻ったと考えるのが妥当だ。
それに手を出したという奴がいたけど、それは首輪によって誤認させられた事実である可能性もある。俺たちはまんまと嵌められたということだ。
くそっ!!浮かれすぎた。
「黙れ!!もう夢の時間は終わりだ。いいかげん夢から目を覚ます時間だ。お前たちは人間の見た目をしているが、人間ではない化け物だ。人の癖に超常的な力を持ち、私たち以上のスキルを持つ。そんな化け物は私達、本当の人類が有意義に使ってやるのが正しいだろう?」
団長が悪魔のように口端を吊り上げて笑う。他の兵士たちも同じような目で俺たちを見ていた。
なんて不快な目線だ。なんでこんな風に見られなきゃいけないんだ。俺たちが何したって言うんだよ。
「お前たちに拒否権はない。お前たちには明日明朝に王都を立ってもらう。目的地は魔王種が住む巣だ。そこでお前たちに魔王種を捕獲をしてもらう。詳細は作戦前に同行する兵士が説明する。以上だ。出立の準備をしておけ」
説明を終えると、クラスメイトの一人が手をあげた。どうやらあまり戦いを好まなそうな人物の一人のようだ。
「なんだ?質問か?聞いてやろう。ただし余計なことはしゃべるなよ?」
「あ、ありがとうございます。私も含めて戦闘できない者もいます。そ、そういった者も作戦に参加するのでしょうか?」
「当然だ。拒否権はないと言っただろう?戦えない?甘ったれるな。そういう奴は死ぬだけだ。戦って死ね。どうしても死にたくないのなら他の奴らに守ってもらうんだな」
「そんな……」
騎士団長の答えに質問したクラスメイトが絶望的な表情になった。
この腐れ外道が!!
「もうないな?それでは即刻明日の準備をしておけ!!」
俺の音叉の心の声もむなしく騎士団長は一度怒鳴ると演習場から立ち去った。
こうして俺たちの新しい日常が幕を開けたのであった。
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