第190話 (仮)
「マジマジステッキ!?その見た目といい、形状といい、『魔法少女マジマジこのは』の主人公、このはが魔法少女に変身した時に使う武器にそっくりじゃない!!」
俺が倉庫から取り出した、如何にもロリっ娘魔法使いの少女が持ってそうなステッキを見てリンネが目を輝かせて鼻息を荒くする。
リンネのやつ、『魔法少女マジマジこのは』大好きだからな。ヒマさえあれば見返してる。多分無印から五期までもう通して10回くらいは見てんじゃないかな。劇場版も含めて。
「ふっふっふぅ。リンネが魔法を使うならこういうがいいかと思ってな?どうだ?」
「もう、さいっこう!!」
だからどうせ魔法を使えるようにするならリンネが大好きな『魔法少女マジマジこのは』のデザインを参考するのが一番いいと思ったのだ。
喜んでくれたようで俺も頑張って製作した甲斐があるってもんだ。
「それからマジマジステッキ4.03だからな、4.03を省略してはいけないぞ」
「わ、わかった……」
俺がずずずいー能面のような表情で有無を言わさせない雰囲気を醸し出すと、リンネが不承不承という表情で頷く。
ただのステッキじゃなくて後ろにバージョンの数字とかつくとかっこいいからな。そこを省略するのは許されないのだ。でも実際4.03っていうのは気分だけどな。色々試したとはいえ、そこまで数のバージョンがあるわけでもない。なぜその数字なのかと言われれば雰囲気である。
俺はリンネにステッキを手渡した。
「わ、わぁ!!そ、それで?マジマジステッキ4.03はどうやって使うのかしら?」
リンネは俺から恭しくステッキを受け取った後、宝物を抱きしめるかの如く扱い、目を輝かせて俺に問う。
「その前に訓練場に移動しよう」
「分かったわ!!」
俺の提案にリンネはウキウキしながら訓練場に向かった。
「ふふふ、見た目だけが一緒だと思うなよ?まずは『マジマジチェンジ』と唱えるんだ」
「分かったわ!!『マジマジチェンジ』!!」
訓練場に来た俺達。俺が不敵に笑いながら説明すると、リンネは早速呪文を唱えた。
「え!?え!?え!?」
リンネの体は少し浮かび上がり、そして輝き始めると、服が粒子となって消え、女性らしくそして引き締まったボディラインが露わになる。ただし、全体が光に包まれ、分かるのはシルエットのみだ。
手の先から方近くまでピンクのロンググローブのような手袋が現れ、さらにその上に先の開いた白い長めの手袋が重なった。次は体にピンクのレオタードのような衣装が下から上に徐々に生まれ、その上にフリフリのスカートがパッと現れる。首から生えるかのように背中にマントが出現し、首元にアクセントのリボンが結ばれた。そして足元からニーハイソックスが徐々に履かれ、その上に腿まであるピンクのブーツが重なる。そして最後に普段サイドテールであるリンネの髪がほどけて、ツー再度アップにリボンが結ばれた。
まさに魔法少女のような変身シーンが目の前で繰り広げられた。
「なにこれ!?」
リンネは自分の姿が魔法少女のそれに代わったことに驚き、自分の体のあちこちを確認しようとペタペタと触ったり、振り返ったりしながら見回している。
「これって魔法少女このはの衣装みたい!!」
「ふははははははっ!!その通り!!どうだ?魔法少女好きだっただろ?実際に魔法少女になってみた気分は?」
「凄いわ!!まさか私が魔法少女になれるなんて思ってもいなかった!!」
「変身にはこだわったからな。喜んでくれて良かった」
喜んで服装を確認しているリンネを見ていると思わず顔がほころんでしまうな。
とはいえ、リンネの年齢を考えれば、魔法少女というか魔法熟女リンネ、というのが正しい気がするが、それは言わないが花だろう。見た目は女子高生くらいだしな。コスプレみたいなもんだと思えば断然ありだ。
「これがマジマジステッキ4.03の一つ目の機能、変身機能だ」
「一つ目ってことはまだ機能があるのね?」
「その通り。というかむしろこっちがメインだろう。もう一つの機能はもちろん呪文によって魔法を使えるようになるものだ。ちゃんとリンネの魔力を使って発動するからな。リンネが魔法を使っていると言えるだろう」
「魔法!!ついに魔法が使えるのね!!」
リンネはあざとく体の前で両こぶしを握ってフンスと鼻息を荒くした。
「そうだ。とはいえ、今はまだ一つしか使えないがな。魔法少女(仮)と言ったところだろう」
「ううん、一つでも嬉しいわ」
俺が自嘲気味に呟くと、リンネはにこやかに笑いながら首を振った。そこには憂いが含まれている。
満面の笑みが浮かべられるくらい沢山の魔法が使えるようにしたいものだ。
「それじゃあ、今使える魔法は単純に魔力の塊を打ち出す魔法『マジックミサイル』だ。呪文は魔法名と同様だ。ただ、魔法は変身している状態じゃないと発動しないようになっているからな」
「わかったわ!!じゃあ、さっそく打ってみるわね『マジックミサイル』!!」
リンネは張り切った様子でステッキを構えた後、呪文を唱える。
リンネの人生で初めての魔法が発動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます